• 採用企業向け
2025/09/26
  1. はじめに
  2. 実務経験が示す「優秀さ」について
    1. 内部監査人に必要な「優秀さ」
    2. 外部監査人に必要な「優秀さ」
    3. システム監査人に必要な「優秀さ」
  3. 監査人に不可欠な資質
    1. 独立性
    2. コミュニケーション力
    3. 論理的思考と柔軟性のバランス
  4. 監査人に関連する資格について
  5. まとめ

1. はじめに

企業経営を取り巻くリスクは年々複雑化し、内部統制・コンプライアンス・ITガバナンスといった領域はもはや「守り」のためだけの仕組みではなく、企業の成長を支える基盤へと進化しています。その中心的な役割を果たすのが監査人です。

しかし、採用の現場に立つと「優秀な監査人とは具体的にどのような人材か」という問いに直面します。

資格を持っていることが必須なのか、会計監査法人の経験がある人が望ましいのか、あるいはシステムに強い人材を優先すべきなのか。単純な条件検索だけでは答えが出にくいのが現実です。

本記事では、そのような現状を踏まえ、内部監査人・外部監査人・システム監査人の三つの立場から、優秀な監査人に共通して求められる経験・資質・資格を整理し、実務経験者としての視点を交えて解説していきます。

単に「採用できた」で終わらず、「採用してよかった」と思える監査人材を見極めるための視座を提供することを目的としています。ぜひ最後までご覧ください。

2. 実務経験が示す「優秀さ」について

まずは、実務経験から「優秀さ」を見極めるポイントについて解説します。

優秀な監査人を採用する上で、最も確実な指標の一つは「どのような実務経験を積んできたか」になります。監査人の場合、単に年数を重ねていることよりも、実際にどのような課題に直面し、どのように解決に導いてきたかが重要になります。

今回は内部監査人・外部監査人・システム監査人の3点に分けて解説します。

2-1. 内部監査人に必要な「優秀さ」

1点目は、内部監査人です。

内部監査の経験においては、企業の業務プロセスに深く入り込み、リスクを特定し、それを改善提案にまで落とし込む力が強く問われます。

例えば、販売部門や店舗の監査に入りますと、手順が人によってばらばらで、属人的な判断に頼っている場面に必ず出会います。その状況をただ「リスクあり」と指摘するだけでは不十分です。そこから「どのように標準化すれば再現性が高まり、差異が減少するか」というような具体策を描き、さらに現場が受け入れられる形に落とし込めて初めて価値が生まれます。

実際、私が在籍した企業において、店舗業務の棚卸差異が多発していた場面に立ち会いました。その際、作業マニュアルの再整備とダブルチェック手順の導入を提案し、差異率の顕著な改善に結び付けた経験があります。

ここに「実務を通じて成果を出した監査人」と「ただ指摘をした監査人」との違いが表れるのです。

2-2. 外部監査人に必要な「優秀さ」

2点目は、外部監査人です。

外部監査人の役割は、財務諸表の信頼性を第三者として保証することにあります。数字の確認に留まらず、企業の経営活動の健全性に対する社会的信頼を裏付ける存在にならなければなりません。

「優秀な外部監査人」とは、単に監査基準を正確に適用できるだけでなく、複雑化する取引や経営判断を理解し、それを監査の枠組みの中でどう扱うかを判断できる人物を指します。

例えば、売上計上のタイミングを巡って被監査会社と見解の相違が生じた場合、外部監査人は「基準では認められない」と突っぱねるだけでは関係が悪化し、監査の本来目的である信頼性確保と改善が両立しません。

優秀な監査人は、まず企業のビジネスモデルや収益認識の背景を丁寧に把握します。そのうえで「基準の趣旨は何か」「この処理を認めた場合に投資家や債権者にどういう誤解を与えるか」などを具体的に説明し、経営陣になぜ正しい処理が必要なのかを納得させる力を発揮します。ここに問われるのは、単なる知識の羅列ではなく専門性を社会的信頼へと翻訳する力なのです。

また、外部監査では監査調書の質がそのまま監査人の実力を反映します。

優秀な外部監査人は、調書に事実・判断・根拠・結論を明確に整理することで、後から第三者が見ても論理が破綻しないように構築します。これは単なる事務処理ではなく、監査人としての責任を可視化する営みです。

採用の現場では、候補者に「これまでの監査で最も難しかった見解差は何か」「それをどう調整したか」を具体的に語らせることで、その人材が単に基準を暗記しているのか、それとも実際に難局を乗り越えた経験を持つのかを見極めることができます。

2-3. システム監査人に必要な「優秀さ」

3点目は、システム監査人です。

システム監査の経験は年々重要性を増しています。特に近年では、ERPの導入やクラウドサービスの普及、RPAの活用など、業務とシステムが不可分になっています。

システム監査の現場でよくあるのは、過剰権限の付与です。利便性を優先して管理者権限を幅広く持たせてしまい、結果として内部統制が形骸化します。

私が経験した事例ですが、営業担当者に不要な会計システムの承認権限が付与されており、不正リスクが潜在していました。そこで、必要最小限の権限に基づいたロール設計の見直しについて助言し、例外的に必要な場合は臨時承認フローとログ監視を組み合わせていただいたことで、業務に悪影響を及ぼさないリスク低減を実現しました。

こうした実務経験は職務経歴書では数行で書かれる内容ですが、面接では、「どのような困難に直面し、どのように乗り越えたか」を掘り下げて聞くことで、候補者の力量が浮き彫りになります。

3. 監査人に不可欠な資質

次に、監査人に不可欠な資質について解説します。

実務経験と並んで、優秀さを測るもう一つの柱は「資質」です。

監査は正解が一つに定まらない世界ですので、法令や基準はあっても、実際の現場には常にグレーゾーンが存在します。その中で優秀な監査人は次のような資質を兼ね備えているかどうかが重要になってきます。

今回は、監査人に不可欠な資質について、3点に分けて解説します。

3-1 独立性

1点目は、独立性です。

ここでいう独立性とは、経営層や現場からの圧力に左右されず、客観的事実に基づいて判断を下せる力を意味します。それは単に突っぱねるといったものではなく、組織にとって耳の痛い事実を伝える際に、それを受け止めてもらう工夫を怠らない姿勢です。

例えば、経営層が「売上を前倒し計上して株主に好印象を持ってもらいたい」と考えた場合、監査人がただ「不正です」「基準違反です」と言ってしまうだけでは、対立は深まるばかりです。

優秀な監査人は独立性の観点をもとに論理的に話す必要があります。今回の例ですと、「短期的に見れば有利に見えるかもしれませんが、次期以降の売上が減り株価が乱高下するリスクがあります」や「長期的な信頼を失えば資金調達コストが上がります」といった話し方を心掛け、経営層が自らの判断で正しい方向へ舵を切れるようにすることが大切です。

つまり独立性とは「反発を恐れず真実を伝える強さ」と「相手に理解させるしなやかさ」の両立に他なりません。

3-2 コミュニケーション力

2点目は、コミュニケーション力です。

監査という業務は「書類と数字を確認するだけ」と思われがちですが、実態は人と人との対話の連続です。現場の担当者は監査を「負担」や「監視」と感じることも多く、最初から協力的であるとは限りません。ここで必要になるのがコミュニケーション力です。

優秀な監査人は、まず相手の立場を理解しようとします。忙しい時期に監査を依頼するのであれば、本来業務に支障が出ないよう、必要最小限の依頼に留めるという配慮を示し、そのうえで「なぜこの証憑が必要なのか」を丁寧に説明します。その結果、現場は「ただの確認作業ではなく、会社全体の信頼性を守るために必要なことなのだ」と理解し、協力的になります。

また、コミュニケーション力は改善提案を通す場面でも発揮されます。単に「不備があります」ではなく、「この手順を追加すれば、あなたの部門の作業効率も上がります」と示すことで、現場にとって監査は「味方」へと変わるのです。

この事から、監査の成否は、指摘内容そのものよりも「相手が納得して動いてくれるか」に左右されるのです。

3-3 論理的思考と柔軟性のバランス

3点目は、論理的思考と柔軟性のバランスです。

監査における論理的思考とは、事実を整理し、因果関係を分析し、根拠に基づいて結論を導く力です。

例えば、監査報告書は誰が読んでも同じ結論に至ることが求められるため、この力が欠ければ監査は信頼されません。しかし、論理のみに固執すれば現場で運用できない理想論に陥ります。そこで求められるのが柔軟性です。

柔軟性とは、基準を曲げることではなく、リスクに応じた合理的な落とし所を設計する力です。

例えば、全件チェックが理想でも人員が足りない場合、リスクの高い取引を抽出して重点的に確認するサンプリング手法を提案する。あるいは手作業の二重チェックが困難であれば、システムのログ監視を代替統制として導入するなどです。これらは柔軟でありながら、重大なリスクを見逃さないための合理的な判断といえます。

優秀な監査人は「正しさ」と「現実性」の間に橋を架ける存在です。論理を武器にしつつも、現場の事情を理解して最適解を描く姿勢こそが組織に受け入れられる鍵となります。

4. 監査人に関連する資格について

最後に、監査人に関連する資格について解説します。

資格は監査人の専門性を客観的に示す指標ですが、資格があるからといって即戦力とは限りません。ただし採用においては、基礎知識や倫理観を保証する材料として重要な意味を持ちます。監査人に関連する資格は様々ですが、代表的なものとして、CIA(公認内部監査人)、CISA(公認情報システム監査人)、CPA(公認会計士)が挙げられます。

CIAは、内部監査の国際標準に基づいた知識を体系的に習得している証拠になります。私自身も本資格を取得していますが、体系的な知識があることで現場での判断に自信を持てる場面が多々ありました。

CISAはシステム監査における国際的な資格であり、クラウドやRPAといった最新のテクノロジー領域にも対応できる人材であることを示します。DXが加速する企業にとっては、今後さらに価値が高まる資格です。

CPAは外部監査領域で強みを発揮します。財務諸表の信頼性を担保するうえで不可欠な存在であり、会社の決算を市場に通用するレベルに引き上げてくれるパートナーになります。

資格はあくまでスタートラインですので、資格に加えて、実務でどのように知識を活かしてきたかを見極めることが採用の成否を分けます。

5.まとめ

ここまで読んでみて、いかがでしたしょうか。

優秀な監査人とは、実務経験・資質・資格をバランスよく備え、企業の課題に対して具体的な改善をリードできる人材です。履歴書や職務経歴書に書かれた内容を踏まえて、「どのような状況でどのように動き、どのような成果を出してきたか」に注目することで、採用の精度は格段に高まります。

私自身、内部監査とシステム監査の現場において、業務改善や統制強化を通じて成果を積み重ねてきました。その過程で、さらなる専門性を磨くためにCIA資格を取得しましたが、理論と実務を結び付ける力を養うことができたと感じております。

監査人に求められるのは「守り」だけでなく、「事業を前進させる伴走者」の姿勢であり、それを実現させるために最新知識のインプットと適切なアウトプットが求められるのです。

 

AB Careerでは、このような即戦力となる監査人材の採用支援を専門的に行っています。もし御社で「優秀な監査人を採用したい」や「内部統制やシステム監査に強い人材を求めたい」とお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

御社に最適な人材を見極め、採用から定着までサポートさせていただきます。

採用担当者様向け求人・人材サーチのお申し込み