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2025/10/15

近年、企業の成長戦略としてM&A(合併・買収)が活発に行われています。

事業の多角化、市場シェアの拡大、技術獲得など、M&Aの目的は多岐にわたりますが、その成功を左右する重要な要素の一つが「人材」です。

そのため、M&Aを見据えた人材採用が企業戦略の中で重要視されています。

一見無関係に思えるM&Aと求人ですが、実は密接な関係があります。

M&Aを成功に導くためには、企業価値評価、交渉、統合プロセスのマネジメントなど、多岐にわたる高度なスキルが求められます。なので、求人においてもこれらのスキルを必須条件とした募集が増加しているのです。

しかし、ただスキルを持っているというだけでは不十分です。重要なのは、そのスキルを社内でどのように活用し、再現性を持って成果に結びつけられるかという「実現力」であり、M&A戦略を成功に導くためには、スキルを具体的な成果に落とし込む力が求められているのです。

本記事では、そのような背景を踏まえた上で、M&Aに関する代表的な求人をご紹介した後、M&A業界に飛び込むことによる成長機会と衝突について、ポジションな面とネガティブな面に分けて解説します。

M&Aにご興味がある方やM&Aに関連するキャリアを形成したい方は是非とも参考にして下さい。

M&Aに関する代表的な求人について

M&A求人市場に溢れる成長機会と衝突

M&Aに関する代表的な求人について

まず初めに、M&Aに関する代表的な求人について解説します。

M&Aに関する求人は、企業の合併や買収に関連する専門的な職種が中心です。

例えば、企業戦略を担うM&Aアドバイザー、内部からM&Aを推進するコーポレートM&A担当、買収・売却のマッチングをサポートするM&A仲介担当などがあります。

これらの職種では、主に「高度な財務・法務知識」や「交渉スキル」や「リーダーシップ」などが求められます。また、M&Aの実行だけでなく、買収後の統合(PMI)を管理するポジションも重要です。

専門性が高い分、年収も高水準になるケースが多く、ハイキャリアを目指す人に人気がある点が特徴です。

M&A関連のお仕事は多岐にわたりますが、今回は代表的な求人として「M&Aアドバイザー」・「コーポレートM&A担当」・「M&A仲介担当」の3つをピックアップし、主な仕事内容や必要なスキルを詳しく解説します。

①M&Aアドバイザー

1点目はM&Aアドバイザーです。

M&Aアドバイザーは、主に投資銀行やコンサルティングファームに所属し、企業の合併・買収において戦略立案から実行までを包括的にサポートします。特に、クライアント(買収側・売却側)の利益を最大化することが一番求められます。

具体的な仕事内容は、主に「M&A戦略の策定」や「市場・業界分析」や「買収候補・売却候補企業の選定」など、多岐にわたります。

仕事内容に対して求められるスキルは、主に「財務・会計の専門知識」や「企業価値評価(DCF法、類似会社比較法など)」や「交渉スキル」などです。

M&Aアドバイザーは、企業価値の正確な評価や財務状況の分析を行った上で、取引条件の交渉時に企業の適正な価値を理解する必要がありますので、これらのスキルが求められるのです。

②コーポレートM&A担当

2点目は、コーポレートM&A担当です。

コーポレートM&A担当は、主に事業会社の経営戦略部門や財務部門に所属し、自社の成長戦略に基づいてM&Aを推進します。M&Aアドバイザーがクライアントの外部支援を担うのに対し、コーポレートM&A担当は内部からM&Aを主導するのです。

具体的な仕事内容は、主に「自社の成長戦略に基づくM&A案件の発掘」や「買収・売却候補企業の選定・交渉」や「デューデリジェンス(財務・法務・ビジネス)の遂行」などです。

仕事内容に対して求められるスキルは、主に「経営戦略の知識」や「財務分析・企業評価スキル」や「コミュニケーション能力」などです。

コーポレートM&A担当は、自社の成長戦略を実現する役割を担いますので、M&Aが自社にとってどのようなメリット・リスクがあるか判断する必要があります。よって、これらのスキルが求められるのです。

因みに筆者がコーポレートM&Aを任されていた時のことですが、M&A案件に対するプレッシャーを今でも覚えています。経営陣へのプレゼンでは、「この買収が自社にどのような成長機会をもたらすか」を理論的かつ分かりやすく、そして説得力を持って説明する必要がありましたので、企業価値評価だけでなく競合分析までしっかり詰めてやっていました。

経営陣や法務・財務部門などとの調整も多いため、タフな精神力と高い調整能力が求められる仕事だと実感しましたが、会社の成長に直接貢献できるやりがいのある仕事です。

③M&A仲介担当者

3点目は、M&A仲介担当者です。

M&A仲介担当者は、主に独立系のM&A仲介会社や金融機関に所属し、売却側企業と買収側企業をマッチングさせる役割を担います。中小企業の事業承継を目的としたM&A案件を扱うケースが多く、経営者との信頼関係の構築が重要になります。

具体的な仕事内容は、主に「売却希望企業・買収希望企業との契約締結」や「企業評価」や「交渉の調整・契約締結サポート」などです。

仕事内容に対して求められるスキルは、主に「財務・会計・法務知識」や「営業力・交渉力」や「企業オーナーや経営陣とのコミュニケーション能力」が求められます。

M&A仲介担当者は、売却企業と買収企業のマッチングを成功させる役割を担いますので、「営業力・交渉力」については特に重視されます。

企業価値や取引の適正性を判断し、経営者との信頼関係を築きつつ有利な条件で契約を成立させる必要がありますので、「営業力・交渉力」は最も重要だと言えます。

M&A求人市場に溢れる成長機会と衝突

M&Aに関する代表的な求人についてご理解いただいたところで、次はM&A求人市場に溢れる成長機会と衝突について解説します。

キャリアパスの一環としてM&A業界に飛び込むことは大変素晴らしい事ですが、M&A業界には多くのポジティブな側面とネガティブな側面がございます。

ポジティブな影響は、求職者にとって新たなキャリアチャンスの創出し、企業の成長とイノベーションを促進させ、最終的には経済全体の活性化に繋がる可能性が高いですが、一方で企業文化の衝突といったネガティブな影響もございます。

今回は2つのそれぞれの観点から、代表的な成長機会と衝突について解説します。

①従業員のキャリアパスの多様化

M&Aのポジティブな側面として挙げられるのが、従業員のキャリアパスの多様化です。

企業統合により、従業員は今まで経験できなかった新たな職務やプロジェクトに携わる機会を得ることができ、キャリアパスの多様性が広がります。

例えば、異なる企業文化や専門スキルを持つ人材との交流は、従業員の視野を広げ、新たな発想やイノベーションの創出を促進することが多いです。

また、統合後の企業では、グローバル展開を加速するケースも多く、従業員は海外勤務や海外プロジェクトへの参加など、グローバルなキャリアを築く機会を得られる可能性もあります。

例えば、異なる地域で事業展開していた企業が統合した場合、従業員は国内だけでなく海外の拠点でも働く機会を得ることができ、グローバルな視点や経験を身につけることも可能です。

②企業文化の衝突と優秀な人材の流出

一方、M&Aのネガティブな側面として挙げられるのは、企業文化の衝突と優秀な人材の流出リスクです。

異なる企業文化を持つ組織が統合される際、従業員は新しい企業文化への適応を求められます。しかし、企業文化の融合がうまくいかない場合、従業員は新しい環境に馴染めず、モチベーションの低下や不満の増大に繋がる可能性があります。

特に、創業以来の企業文化を大切にしてきた企業が、全く異なる企業文化を持つ企業に買収された場合、従業員の間に大きな戸惑いや抵抗が生じることがあります。

企業文化の衝突は、コミュニケーション不足、経営方針の違い、評価制度の違いなど、様々な要因によって引き起こされます。

このような状況が続くと、優秀な人材がより良い環境を求めて他社へ流出するリスクが高まります。人材流出は、M&A後の事業運営に大きな支障をきたすだけでなく、企業の競争力低下にも繋がるため、企業は企業文化の融合に積極的に取り組む必要があります。

自分に合った求人情報を見つけよう

ここまで読んでみて、いかがでしたでしょうか。

M&A関連の求人に応募する際には、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

まず、求人内容をしっかりと分析することから始めましょう。求人には業務内容や求められるスキルが具体的に記載されていますが、スキル要件を満たしているかどうかを確認するだけでは不十分です。

「その企業が求めている成果を自分のスキルでどのように実現できるか」という視点で読み解き、企業のM&A戦略や今後の成長方針などをリサーチしながら、自分のキャリアプランや得意分野とマッチしているかを確認するようにしましょう。

そのためには、徹底的な自己分析が大切です。

自分の強みやスキルを棚卸しし、「どのように企業に貢献できるか」を明確にすることで、応募時の説得力が増します。

特にM&A関連の求人では、求人票によって求められるスキルが異なりますので、これまでに培ってきた経験がどのように活かせるかを具体的に言語化できるよう練習しておきましょう。

また、「即戦力」としてのアピールポイントを整理しておくことも重要です。これまでの経験を活かしてどのように成果を出せるかを明確に説明できるようにしておくと、企業側にとっても魅力的に映ります。

M&A関連の求人は、案件ベースで募集されていることが多く、短期間で採用が決定するケースも珍しくありません。市場動向や企業のM&A戦略を注視し、自分のスキルや経験が合致する求人が出たタイミングを逃さないことが大切です。

是非、自分に合った求人を見つけ、キャリアアップへの第一歩を踏み出しましょう。

本記事が何か1つでも参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。