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2022/04/21

会計士として海外駐在してみたい!監査法人で駐在の可能性が出てきたけど、場所はどこがいいのだろう?憧れで決めてしまっていいのかな?と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、このようなお悩みを持つ方々を少しでもサポートできればと思い、こちらの記事を書きました。

前回からコラムを書かせて頂いている、公認会計士の近衛(このえ)と申します。プロフィール、過去の記事はぜひこちらをご覧ください。

「監査法人 – 海外勤務編 “海外派遣プログラムでグローバルに活躍してみませんか?」

私は監査法人から英国・ロンドンのメンバーファームに駐在しておりました。ロンドンへの派遣を希望する過程で、複数の視点から他の都市と比較した上で希望を出しましたので、今回はその中から「こういう方にはどの都市がおススメか」という情報を、私の経験や個人的な意見も踏まえながら皆さんにご紹介したいと思います。

今回の前提として、日本にある監査法人(監査・会計アドバイザリー)から海外赴任を目指される方を想定しています。

海外駐在先での監査業務

ほとんどの方は、派遣先のジャパンデスクやジャパンプラクティスと呼ばれている日系クライアント対応の監査部門に配属されるかと思います。そこでは主に日系子会社や関連会社の監査やアドバイザリー業務を担当することになりますが、監査であれば、1.日本にある親会社の監査チームからインストラクションを受けて行うグループ監査と、2.現地国の会社法に基づいた法定監査を行うことになるかと思います。特に「1. 」については、親会社が日本の会計基準(JGAAP)・内部統制基準(JSOX)の場合は、基本的に同じ基準の下で海外子会社も監査を行うケースが多く、親会社監査チームとのオンラインミーティングやメールでの連絡などもありますので、日本での監査経験や日本語が話せることをそのまま活かすことができるでしょう。ただし、ジャパンデスクといえど全員が日本人ではありませんので、監査チーム内の毎日のコミュニケーションや、調書作成ではもちろん英語スキルが必要になります。クライアント対応についてはケースバイケースですが、クライアント側が日本人駐在員であることもあれば日本人ではないこともあります。駐在する場所によって日本語・英語の使用割合が変わりますので、事前に情報収集をして求められる英語レベルを確認されると良いでしょう。

もちろん、ジャパンデスクでも非日系企業の監査があります。せっかく海外に出たのだから、現地の上場企業や固有のインダストリーに関与してみたいという方もいるでしょう。希望を伝える機会もありますが、リソースの状況や経験・スキルによりアサイン割合が異なりますので、確認が必要になります。

私の駐在先もジャパンデスクでした。メインクライアントの監査チームは10名程度で構成されていましたが、その中にいる日本人は私だけで、クライアントにも日本人の方は少なかったので、業務の90%は英語を使用していました。一方、監査チーム以外には日本人がいましたので、業務以外では日本語を話す時間もたくさんありました。

また、初めの1年間は日本で担当していた日系企業の現地子会社の監査がメインでしたが、2年目に欧州系の企業にも関与することができました。例えば、フランスの化粧品会社やイギリスの再生エネルギーの会社などです。クライアントのビジネスモデルや商習慣が日本とは全く異なりとても新鮮でしたし、監査チームもジャパンデスクのチームとは文化が異なりとても面白かったです。私にとってこの経験は人生を変えるイベントになり、駐在の任期終了後も海外で働き続けたいと思うようになりました。

海外駐在先を決める軸

監査法人にはグローバルネットワークがあり、各国にジャパンデスクがあります。実際に希望を出す際にはどこの国・都市にするか迷う方も多いと思いますので、私が駐在先を選んだポイントについていくつかご紹介したいと思います。

仕事

日系企業のグループ監査を目的としたJGAAPの使用以外にも、法定監査や現地企業の監査などでは、海外の会計基準や監査基準を使用することになります。特にアメリカではUSGAAP・PCAOB監査、ヨーロッパやアジアではIFRS・ISA監査と大別することができるでしょう。また、赴任後は主に日系クライアントの関与が多くなると思いますが、志向に合わせて現地企業を担当できる可能性も把握した方が良いと思います。また、赴任前に期待していたほど英語を使わなかったという経験談をよく聞きますので、事前に情報収集すべきでしょう。また、場所によってはシニアスタッフのレベルでもコーディネーション業務を担当する場合もあるようです。このように、赴任先の地域によってどのようなスキルアップが期待できるかが異なりますので、自分の興味や帰任後のキャリア志向に合わせて慎重に選ぶ必要があります。

プライベート

労働時間に対する考え方が各国異なるので、家族帯同で赴任予定の方は特に気にされるかと思います。他にも、気候や文化が自分や家族の好みと合うかも重要です。キャリアだけではなくプライベートも含めて“楽しめそうか”という観点でも選んで頂きたいと思っています。

海外駐在都市の例

アメリカ

特徴としてはやはりUSGAAPとPCAOB監査になるかと思います。日本の監査法人にて、米国系企業を担当されている方は良くご存じかと思いますが、PCAOB監査は最も監査対応が厳しいといわれることが多く、特に内部統制の評価と検証、調書化についても高品質なアウトプットがもとめられます。このような環境ですので、監査スキルをさらに磨きたい方には特におすすめです。また、USCPAを取得された方においては資格を活かせる環境ですので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

ニューヨーク

日系・米系企業を問わず大企業のクライアントが多く、ほとんどのインダストリーを網羅していますが、特に金融系の会社が他の都市に比べて割合が多いでしょう。監査法人からの駐在員が多く、クライアント側も日本人駐在者が多いのが特徴で、日系企業のクライアントを担当する場合には日本人の駐在員同士で仕事をすることも多いです。この場合、仕事での日本語使用割合が高くなると思います。ニューヨークのイメージで“忙しそう”と思われる方も多いともいますが、監査法人内でもやはりニューヨークは忙しいと聞くことが多いです。

サンフランシスコ

サンノゼ・シリコンバレーからサンフランシスコまで続く西海岸ベイエリアには、多くのテクノロジー企業が集積しています。最近話題になっているフィンテックやバイオテック、ヘルスケア業界などのベンチャー企業もあります。監査法人でも、ジャパンデスク内のチームとして現地のベンチャー企業支援を行っているところもあります。日本において、ベンチャー企業の監査やIPOのサポートを行っている方は特に業務内容の親和性が高いと思いますし、世界でも有数の成長産業の地で、新しいビジネスを展開しているクライアントに興味がある方には特におすすめです。

ヨーロッパ

特徴はIFRSとISAによる監査になるかと思います。日本の上場企業においてもIFRSを導入している会社は年々増えているので、赴任前からIFRS監査経験のある方も多いでしょう。

ロンドン

大手日系企業のクライアントが多く、日本人駐在員の数もニューヨークと並んで多い傾向にあります。個人的な経験では、1年を通して残業時間が少なく、繁忙期でも夜7時以降にオフィスに残っている人はほとんどいませんでした。また、働き方も比較的ゆったりとしている方が多く、有給やプライベートな時間を最優先と考えている方も多かったと思います。仕事以外では、ヨーロッパ各国へのアクセスが非常によく、格安航空会社(LCC
)も多いので、週末を利用して近隣国へ旅行に出掛ける方もいらっしゃいました。

私は2年間駐在しておりましたが、LCCを使って20か国以上の国に滞在することができました。アクセスが良いので、様々なカルチャーに触れられるのもロンドンの良さだと思います。

アジア

シンガポール

ヨーロッパと同様に、IFRSとISAをベースとした監査が多いのが特徴です。日系企業も大手から中小ベンチャー企業まで、幅広い企業が進出しています。同じアジア内ですので、現地のカルチャーや働き方も日本と重なることがあります。日本ほど毎日の残業が多いわけではありませんが、取引先との食事会や休日のゴルフなどの交流会があると聞くことも多いです。シンガポールは基本的に英語でのコミュニケーションではありますが、中国系や他のアジア諸国から来ている方が多いため、日本人にとっては比較的聞き取りやすい英語になると思います。

まとめ

以下が監査法人で海外駐在先を選ぶためのポイントです。
1.スキルアップしたい専門性は何か:USGAAPやIFRS、現地特有のビジネスなど
2.期待する経験ができそうか:日系企業 vs 現地企業、英語使用頻度など
3.プライベートも楽しめそうか:労働時間、カルチャー、気候など

いかがでしたでしょうか。今回は海外駐在の希望国を決める際のポイントをご紹介しました。

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Profile

近衛祐哉(このえ・ゆうや)
公認会計士、MBA(University of Southern California)

2008年筑波大学卒業。銀行で勤務した後、公認会計士試験合格。監査法人にて総合商社や外資系企業の監査に従事した後、ロンドン駐在。帰任後はロサンゼルスにMBA留学し、卒業後はシリコンバレーにある監査法人にてテクノロジー企業のIPO/SPACやM&Aにおける会計アドバイザリー、財務デューデリジェンスなどに従事している。