デロイトトーマツ: 前職で感じた歯がゆさ。よりクライアントと深く関わるために監査法人へ
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大木さんは、USCPA全科目合格を機に転職活動を開始されました。大学では文系学部だった大木さん。新卒で東証一部上場SIer企業に入社され、自社会計パッケージソフトの導入コンサルタントとして勤務。未知の世界からIT業務に挑戦されたお話や、転職後「USCPA×IT」という知見を、監査法人でどのように活かすことができるのか、具体的にお伺いしました。
※SIer:システムインテグレーター企業を指す。社会に必要不可欠なあらゆる「しくみ」を、ITを使って構築する情報サービス企業を意味しており、IT業界ではSIer(エスアイヤー)と呼ばれることが多い。
「働きながら目指せる」「英語・会計のスキルを伸ばせる」資格はUSCPA
監査法人に転職される前について教えてください。
新卒で就職活動を始めた当初は、どのビジネス業界も実態が全く分かりませんでした。四季報や業界地図を眺めながら、何となく「この会社に入ったら自分はこんな仕事をするだろうな」「この会社は10年後もそれほど仕事内容が変わらないかもしれない」等と考えていました。その中で、どんな仕事内容なのか全くイメージが湧かず、かつ変化が激しそうな「IT業界」であれば、同じ会社の中でも、様々な仕事にチャレンジし続けることができて面白そうー、そんな漠然とした期待感をもって、IT企業を中心に就職活動を進めました。
就職活動中は、公共性の高いシステムを扱ってみたいという想いを持っていたため、そういった分野に強い前職に入社しました。しかし蓋を開けると、公共事業ではなく民間企業向け、かつ、それまで全く知識のなかった会計のシステムを扱う部署に配属となり、入社早々、システムの勉強と並行し、簿記3級から会計の学習にも取り組むことになりました。
必要に迫られて始めた会計の学習でしたが、進めていくと次第に内容が面白くなりました。加えて、配属となった部署では、システム開発ではなく、既にできている会計パッケージソフトを導入するクライアントに対し、いかにシステムと現場実務をフィットさせていくかというコンサルティングをメインの業務としていました。私が関わったプロジェクトは、比較的少人数のチームだったため、若手の時からどんどんクライアントの前に立って説明したり、議論の解決策を示したりする機会に携わることができ、やりがいを感じるようになりました。今では、前職の人事に「よくぞここに配属してくれた!」と感謝しています(笑)。
USCPA(米国公認会計士)を取得しようと思ったきっかけは。
社会人4年目の頃、クライアントの海外拠点に対して会計システムを導入するプロジェクトが立ち上がり、会計を英語で理解しなければいけないという機会が生じました。当時、簿記2級は既に持っていたので、せっかくなら英文会計を学ぼうと思い、BATIC(国際会計検定)の勉強を始めました。
BATICの勉強を進めるうちに、より専門性・難易度の高い資格に挑戦したいという気持ちが湧いてきました。日本の公認会計士への挑戦も考えましたが、「働きながら目指せること」「英語・会計、両方のスキルを伸ばすこと」の2点を重要視していたので、USCPA取得を決意しました。
前職で感じた歯がゆさ。よりクライアントと深く関わるために監査法人へ
どうして転職活動をしようと思ったのですか。
前職でのクライアントは経理部の方が中心であり、「自分達のシステムを相対するクライアントに使ってもらえる」「パッケージ化されている標準機能を『どう使おうか』と、一緒に汗をかいて考えていく」という業務内容にやりがいを感じていました。しかし、一方でシステム機能を利用しない業務に関する検討は、クライアントに委ねざるを得ない場面も多く、もっと業務目線で深い所まで一緒に検討していきたいという歯がゆさも感じていました。
そこで少しSIerという立ち位置から離れて、クライアントと一緒に深いところまで業務設計の検討・支援ができる仕事をしてみたい、と考えるようになりました。その一つの選択肢として思い浮かんだのが「監査法人」で働くことでした。
「一緒にキャリアを築いていきましょう」、面接で実感した法人の魅力
有限責任監査法人トーマツに入社を決めた理由
トーマツの入社を決めた理由は二つあります。一つ目は、面接の進め方でした。トーマツの面接では、前職の職歴を生かして、どのような活躍が出来そうか、という点だけでなく、「入社後に何がしたいのか」ということを真剣に聞いてもらえました。
中途採用の場合、即戦力としてどう使えるかというところを重視されることが多いのではないかと思います。ですがトーマツでは、「未経験業務への挑戦も含め、やりたいことがあるなら、できるだけそこに合うような形で一緒にキャリアを築いていきましょう。」という話をしていただきました。「人を育てる会社」だと面接を通して感じられたことが、入社を決めるうえで、とても大きかったと思います。
二つ目は、さまざまなバックグラウンドを持つ人がいる中で、お互いに強みを発揮し合う環境であるという点です。どんな方が同僚になるのか面接時に質問しましたが、金融機関、事業会社の経理部門や経営企画部門、コンサルティング会社、等多種多様な会社から転職したメンバーが揃っており、転職時の年齢も様々と聞きました。入社後にその点は日々実感しています。多様なバックグラウンドを持つメンバーが、各自の強みを活かして働いているので、日々刺激を受けています。
また、これは入社時あまり意識していなかったのですが、トーマツは働き方改革も進んでいます。例えば、現在リスクアドバイザリー事業本部では、22時以降、原則パソコンのアクセスができないようになっており、仕組みとして、一定時間仕事から離れることが出来るようになっています。監査法人はどうしても激務というイメージを持つ方も多いと思いますが、積極的に制度や仕組みが変わってきていると感じています。
実際、お子さんがいる同僚の中には時短勤務の方もいますし、保育園のお迎えで早めに帰る、ということも、男女関係なく皆さん普通にやっています。個々人のライフプランに合った働き方ができるというところは、制度だけでなく、カルチャーとして根付いていると感じています。
部門をまたいだプロジェクトに参画できる、刺激的な毎日
現在の担当業務について教えてください。
私が現在所属している、アカウンティング&ファイナンスは200人強の組織です。その中でアカウンティングアドバイザリー(AcA)とファイナンシャルマネジメントアドバイザリー(FMA)に分かれています。AcAが約150人、FMAが約70人です。前回インタビューの吉野 純子さんと同じ組織です。大所帯なのでプロジェクトを通して人脈やネットワークを作っていくことが多いです。
プロジェクトのアサインは、都度希望を確認してもらいながら決まっていきます。具体的には「今のプロジェクトはあと●ヶ月で終わるけれど、次はどんなことに取り組みたい?」ということを面談の中で相談します。その時に、「△△企業向けの□□□はどう?」というように提案され、期待される役割・スキルなどを確認しながら決めていきます。
また複数部署をまたいでメンバーが集まるプロジェクトもありますし、リスクアドバイザリーの中でのコラボレーションだけでなく、他の事業本部や、デロイト トーマツ グループ内の他法人メンバーと一緒にプロジェクトに取り組む機会もあります。実際に自分も、昨年度はデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(DTC)とのプロジェクトに参画しました。同じグループの中でも、法人が異なると、また違ったカルチャーやバックグラウンド・スキルを持つ方々と一緒に仕事ができるので、非常に面白く、刺激的だと感じています。
私が現在携わっている業務は主に二つです。一つは、OJTとして関わらせてもらっている日本企業の会計監査。これは5~7人ぐらいのチームメンバーで行っており、四半期ごとなど、日程を決めてクライアント先へ訪問し、それ以外の時期は二重橋本社オフィスに出社します。二つ目は事業会社のERP(基幹システム)導入に関する支援です。こちらも5~6人という、比較的小規模なチームで行っていますが、基本的にアサイン期間はクライアント先に常駐し、先方の担当者の方と机を並べて仕事をしています。このように、担当業務によって、出社場所もクライアントとのかかわり方も様々です。
ERP(基幹システム)導入に関する支援業務では、経理部の決算業務の支援や、新しいERP導入後の業務運用の検討支援を行いながら、前職の経験を活かし、システム導入に関わるさまざまなテスト準備をどうするのか、といった計画策定・推進にも取り組んでいます。システム導入プロジェクトには前職でも参画していましたが、SIerとして関わっていた当時のクライアントからの期待値は、主に「きちんとそのシステムがスケジュール通り導入されるか?」「機能が想定通り使えるか」といった点にありました。今は、システム利用範囲にとどまらず、「この業務は会計的に適切か」と言った問い合わせを受けることもありますし、システム変更に伴って生じる会計処理の変更点について、監査法人としての目線で懸念点が無いか、コメントを求められることもあります。(私がアドバイザリーとして関わっているクライアントは、別の監査法人が監査を担当しています。)まだまだ、自分だけでは答えられないことも多いのですが、プロジェクトチーム内や社内の有識者への意見照会を行いながら進めていくことで、日々、自分自身の学びにもつながっていると感じています。
変化するクライアントニーズに応えるため、私たちもブラッシュアップが重要
入社後に関わった複数のプロジェクトを通して感じているのは、リスクアドバイザリー業務は、「最終成果物」、もしくは「期間」は決められているものの、「これをやったら/作ったら仕事は終わり」というように、明確なタスクや作業レベルの割当が決まっているわけではない、ということです。プロジェクトチームの構成や役割分担は、解決すべき課題や達成すべきゴールに対して、各メンバーのスキルや業務経験等をふまえて決まっていきますが、実際に客先で話を聞き、「この分野はあなたが得意そうだから任せるよ」というように、その場で役割が増えることも多々あります。プロジェクトの大枠は決まっていますが、そのプロジェクトの数ヶ月間の中で自分のやっていることや、立場というのは流動的に変わっていきますし、クライアントのニーズ自体が、最初の提案時から少しずつ変わってくることもあります。その都度、私達はどのようにクライアントに貢献できるのかということを考え直し、ブラッシュアップしながら業務を進めていく必要があり、そのための柔軟性は、プロジェクト・職位に関わらず、求められていると感じています。
また、自分なりにプロジェクトチームにどう貢献するか、意識的であることも重要だと感じています。私は前職での経験もふまえ、課題解決の中でシステム知見が必要になったら「そこは自分がやってみます」と手を挙げるようにしています。逆に、会計制度に関する知識やノウハウが求められる場面では、日本の公認会計士の資格を持っているメンバーに助けてもらったり、前職で経理経験を有するメンバーに、決算業務の運用フローについて相談したりすることもあります。
業界の慣習やルールの理解が足らず苦労することも
監査法人で働き始めて、特に会計監査の業務においては、仕事の進め方が分からず苦労しました。会計監査の仕事は、1年を通したスケジュールのもと行われますが、特に1年目は自分には知らないことばかりで「次に何をしてよいか分からない」ということが多々ありました。でも私自身、そういう刺激を受けたくて転職したということもありますし、受け入れてくれた監査チームの方々に感謝しています。
入社後、USCPAを活かせていると感じる瞬間
クライアントと初めて挨拶する際、USCPAは興味を持っていただきやすい資格と感じています。「日本人でも取れるのですか」「アメリカで試験を受けるのですか」等、アイスブレークで質問をいただくこともあります。
また名刺に「米国公認会計士」と書いてあると「英語も会計もある程度分かる人」ということが、1行で伝わります。30歳前後だと、まだ経験値や知識面で、先方から不安に思われることも少なくないのではと思います。そういう時に、勉強してきている人だと認識していただけるのは、USCPA取得のメリットだと思っています。
加えて「英語で幅広い知識を学習できる」という点が大きいです。私自身、USCPA学習を開始する前は、単純に簿記の英語版と思っていました(笑)。ですが、学習を進めると、経営論・監査論・IT・経済学の内容が入っており、意外と扱う領域の幅が広いと感じました。広く浅く、ではありますが、会計・監査以外の、社会人として必要な知識も英語で押さえることができるので、会計のプロフェッショナルを目指さない場合でも有意義な学習内容だと思います。
USCPA学習がIFRS・日本基準をキャッチアップする手助けに
USGAAP(米国会計基準)とIFRS(国際会計基準)・日本基準は共通する部分も多いので、業務上、「異なる会計基準だから別物」と感じる機会は、現在の業務ではそれほど多くありません。勿論、基準間の差異はありますが、USGAAPを知っていれば、IFRS・日本基準ベースの議論においても論点は分かるので、あとはそこから自分が基準間の差分をキャッチアップすれば良いのです。USCPAは、日本の会計基準やIFRSの理解を深める上でも、足がかりになりやすいと思います。
日系企業のクライアントでは、当然ですが日本基準を適用している企業が多いので、USCPAそのもの、例えばUSGAAPの知識がダイレクトに使えるかというと、難しい側面もあります。しかし、業務上、英文の報告書や資料を読まなければいけない機会があるので、そのようなときに瞬時に日本語訳が分かると、USCPA学習を通して得られた、英文で会計が理解できるというスキルが役立っていると感じます。
今後のキャリアビジョンについてお聞かせください。
今はまだ明確な答えは決まっていません。ただ、前職でのシステム導入の経験や、USCPAの資格勉強を通じて得られた会計知識をベースに、次は今後自分のコアとなる強み、得意技を見つけていきたいと考えています。
転職活動をする際に、最初に思い浮かんだのがアビタスでした
アビタスの転職サポートを利用してみて
私は、最終的には他予備校でUSCPA学習を始めましたが、さまざまな予備校の説明会に参加する中でアビタスの転職サポートのアドバイザーと個別相談をする機会がありました。そこでUSCPA取得後のキャリアの広がりや、実際に転職しなくても、どのように生かすことができるのか事例を交えて、気さくに教えてもらえたことが、ずっと印象に残っていました。
USCPA全科目合格後、転職しようと決めていたわけではないものの、どこかに話を聞いてみたいと思った時に、最初に思い浮かんだのがアビタスでした。
アビタスの転職サポートにはさまざまな求人を紹介していただきました。アドバイザーも、私の転職活動を急かすこともなく、また「何社出さなければ駄目です!」というような言葉もありませんでした。私は前職の業務にやりがいもあり、会社も好きだったので、割と迷いながら転職活動を進めていました。だからこそ、無暗に応募するのではなく、本当に覚悟が決まったところにだけ応募したいという気持ちがありました。私の意志を尊重しながら進めていただき、とてもありがたかったです。
苦労した分だけ、自分の自信に繋がる「経験」
USCPAを目指す皆さんへ
USCPAは、それなりに時間もお金もかかる資格だと思います。私自身、「本当に合格するのかな」「こんなにお金をかけて大丈夫かな」「仕事との両立が辛いな」といった、不安を感じていました。
気持ちが挫けそうな時は、色んな方のUSCPAの合格体験記を読みました。仕事をしながら合格する方がとても多く、励まされました。
仕事との両立は大変でしたが、それを乗り越えてUSCPA合格を果たしたことは、自分の自信に繋がると思います。またUSCPAを機にキャリアの選択肢も広がると思います。辛いときは、「なぜUSCPA学習を始めたのか」という初心を思い返して、頑張っていただけたらと思います。
上司からのメッセージ
リスクアドバイザリー事業本部コンピテンシー事業部アカウンティングアドバイザリー パートナー 小林 功幸氏
専門性・多様性・国際性を兼ね備えたUSCPA
大木 絵梨さんの働きぶりは
大木さんは前職において会計システムを含む様々なシステム導入支援の経験を有していて、USCPA合格を機に、トーマツに入所しました。アカウンティングとITの二つの専門性に加えて持ち前のグローバル対応力を活かして、クオリティの高いサービスを多くのクライアントに提供しています。
直近で関与しているERPシステム刷新に係る経理部門支援のプロジェクトは、当部門の注力領域の一つですが、クライアントから最も信頼されるメンバーの一人として大活躍中で、プロジェクトチームにとって欠かせない存在となっています。
明るく朗らかな大木さんは、プロジェクトを共にしたトーマツのプロフェッショナルの全員が、決まって「また大木さんと仕事がしたい」と、リクエストしてくる、そんなプロフェッショナルの一人です。
USCPAホルダーに期待すること
トーマツ リスクアドバイザリー事業本部(以下、トーマツRA)がUSCPAの方々に期待することは、主に以下の3点です。
★専門性
USCPA合格者の方々は、会計の基礎的な専門性を身に着けていらっしゃいます。言い換えれば、基礎理論や制度理解を基礎とした確かな視座から、企業行動や戦略、或いは企業経営そのものを把握・分析する力をお持ちです。トーマツRAでは多くのUSCPAの方々が、会計の専門性を活かして、クライアント経営課題の本質に迫り、付加価値の高いサービスを提供しています。
★多様性
現職(前職)でのお仕事をしながらUSCPAを取得される方が多く、またそのバックグラウンドも様々です【事業会社(経理、財務、企画、営業、開発)、ファーム(コンサルティング、監査、IT)、官公庁、金融機関】。トーマツRAでは、多様なスキル・経験をお持ちのUSCPAの方々にご入社いただいており、トーマツRAがマーケットに提供するサービスの幅を広げるうえでの、貴重な即戦力になっています。
★国際性
グローバルなビジネスシーンにおける2つの共通言語である英語と会計。トーマツRAでは、多くのUSCPAの方々が、英語と会計の二つの武器を活かして、クライアントのクロスボーダーの経営課題の解決に向けてデロイトのグローバルネットワークを活用して大活躍中です。