経理の転職で求められるスキルとは?ハードスキル・ソフトスキルの両面で解説
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経理はどのような会社でも必要な機能であるため、専門性の高い経理パーソンは業種問わず求められており、特に昨今の人材不足は追い風となっています。
一方で、転職を考えている経理パーソンの中には「転職先で求められるスキルとは具体的には何か」、「どのようなスキルをアピールすれば良いのか」と悩まれる人も多いでしょう。また、専門性のある仕事に従事したいという思いから経理への転職を考えている未経験者も多いでしょう。
本記事では、経理転職で求められるスキルについて、ハードスキル・ソフトスキルの両面から解説します。
経理転職で求められるハードスキル
ハードスキルとは、専門知識や技術といった習得してできるようになったこと使えるようになったものを指します。
ここでは、経理転職で求められるハードスキルの中で代表的なものを6つ紹介します。
1.決算対応(月次/四半期/年次)
経理パーソンとして最も基本的なスキルとして、決算対応をイメージしている人は多いかと思います。具体的には、営業部門等からあがってくる証票をもとに適切に伝票を入力したり、様々な引当金の計算・入力、有価証券の評価、税金計算等、多様な業務があります。
また、それらの結果を取りまとめ、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表をまとめるスキルも重要です。
通常の企業では月に一度の月次決算、年に一度の年次決算があり、上場企業等になると3か月に1度の四半期決算対応も必要になります。
特に、月次決算、年次決算対応はどのような企業でも実施しているため、転職を考えている経理パーソンとしては必須スキルとなります。
2.会計システム操作
現在、ほとんどの企業では会計システムを用いて経理業務が行われています。会計システムと言っても企業規模によって使われているものは大小様々であり、弥生会計等の市販ソフトや、SuperStream等の単体決算システム、DivaSystem、STRAVIS等の連結決算システムがあります。
経理業務を行う上では、これらの会計システムを操作するスキルは必須となります。しかし、全てのシステムの細かい仕様にまで精通する必要はなく、基本的な操作さえ分かればある程度他のシステムの操作にも応用が可能ですので、最低限の素養があれば充分です。
もちろん、一つのシステムに深く通じていることも企業からの評価は高くなるといえます。例えば、特定の会計システムに詳しい人は、転職検討先で同様のシステムを使っている場合は面接での評価は高くなる可能性があります。また、会計システムの導入経験があればさらに評価は高まります。
3.開示資料作成
投資家へ向けた開示資料を作成する開示業務は、上場企業であれば経理部門の大きな業務の一つです。
開示資料には、有価証券報告書、四半期報告書、決算短信等があり、企業のビジネスや経理の状況、その他重要事項等、企業に関する全般的な情報が網羅され開示されます。また、開示資料の作成には経理だけでなく他部門との連携が必要なものも存在します。そのため、開示内容は多岐にわたり、内容も毎年全く同じであるわけではないため、どういった情報の開示が法令で求められているか、自社の経営環境を日々注視しながら作成をする必要があります。
そして、開示資料の作成は決算業務とは異なる専門性が求められるため、開示業務に携わったことのある方は決算対応経験のみの方に比べ評価されやすいです。
特に昨今、上場企業の数は増加傾向にあり、またサステナビリティ開示等、年々開示内容も広範になっており、そうした開示業務の経験を持つ人材のニーズは転職市場で強く、非常に有利であると言えます。
4.監査法人対応
上場企業や会社法上の大会社は、公認会計士による監査を受ける必要があります。
監査とは、監査を受ける会社の会計処理が会計ルールに則って実施されているかを確認する作業を指します。監査の中では、監査を受ける会社の、主に経理担当者の話を聞きながら、数字の確認や分析作業、質問を実施します。
監査の中で公認会計士から受けた質問にそのまま回答をするといった単純なものだけではなく、ある会計処理に関して自社内でポジションを整理し、監査法人側に説明をし合意をもらうよう粘り強く交渉が必要な場面も多いです。こうした交渉には会計の専門知識だけでなく、論点を整理し周囲を納得させるだけの交渉力、粘り強さが必要になります。
こうしたスキルは一朝一夕に身につくものではないため、日頃から監査法人と折衝をし、経験を積んでいる方は転職市場で高く評価されやすいです。
5.申告書作成
企業は、法人税等の税金申告書を作成し、税金を納付することが求められます。
申告書の作成は会計知識とは異なる税法の知識が求められ、一般的な経理パーソンでも実務対応したことがない人は多く、申告業務の経験がある方の市場価値は高いです。
具体的には、法人税、消費税、固定資産税等の税目に関する基本的な知識があり、e-Tax等の操作経験があれば経理パーソンとしては充分と言えます。税理士資格の取得等は必要なく、基本的には企業で契約している税理士との相談の上で作成することが多いです。
税金申告書の作成はハードルが高いように感じる人も多いですが、基本的な対応ができるだけでも転職市場で評価されるスキルであると言えます。
6.連結決算まとめ
子会社や関連会社がある企業では、親会社だけでなく、国内・海外子会社及び関連会社を含めたグループ全体を合わせて行う連結決算を行う必要があります。連結決算は、通常の各社別の決算を理解していることに加えて、連結決算独自の会計処理方法を理解する必要があります。
連結決算とは一言で言うと、各社の決算数値を合算し、グループ会社間の取引等を消去することにより行いますが、理論的に難解な論点も多く、連結決算に関する知識、スキルを有する人材は経理パーソンの中でも少数で希少価値が高いです。
また、連結決算においては国内外のグループ会社の会計処理についても理解しておく必要があり、単なる会計知識のみならず、グループ会社のビジネスの性質等も把握しておく必要があります。
このように、連結決算では単なる会計知識に留まらず、子会社コミュニケーション、子会社の状況の理解等広範な知識が求められるため、連結決算経験のある人材は転職市場で高く評価されます。
経理転職で求められるソフトスキル
ソフトスキルとは、信頼性の高さや寛容さ、時間管理といった、時間をかけて身につけた個人の特性に関連するスキルです。
ここでは、経理転職で求められるソフトスキルの中で代表的なものを3つ紹介します。
1.コミュニケーション能力
経理と聞くと、パソコンでひたすら数字の集計等をしているイメージを持つ人も多いですが、実際にはコミュニケーション能力が非常に重要な業務です。具体的には、営業等の他部署や子会社とのやりとり、監査法人との打ち合わせ、さらには経営陣への報告等、タイムリーかつ正確な意思疎通が必要であることが多いです。
コミュニケーション能力に難があると、スムーズに業務を進めることができないだけでなく、ミスコミュニケーションによる業務上の重大なエラーに繋がる可能性もあります。例えば、決算を締めるうえで子会社に伝達すべき事前情報が適切に伝わっておらず、決算が適切に締まらないリスクや、監査法人と事前に擦り合わせを行っていたと認識していた事項について実は双方で認識の相違があり、決算が締まる直前で結論がひっくり返る可能性があります。
こうした最悪の事態を未然に防ぐためにもコミュニケーション能力は非常に重要です。
2.学習意欲
経理業務を行う上で会計知識が必要であることは言うまでもないですが、自社のビジネスへの理解や経済環境への理解といったものも必要になります。
こうした知識は常にアップデートする必要があり、経理人材も常に学習をし続け、キャッチアップをする必要があります。具体的には、会計基準の新設・改正がある度に自社にどういう影響があるか、どのような会計処理をすべきかを検討する必要があったり、自社が新規のビジネスを始める際にはどのタイミングで売上・費用計上すべきか等を検討することが必要になります。また、経済環境も、金利が変動すれば会社にとって重大な関心事項である減損リスクにも影響が出たりします。
このように、情報に対するアンテナを高く持ち、常に情報をアップデートし続けられる人材である必要があります。
3.批判的思考力
経理業務を行う上で、他部署から経理に上がってくる情報が必ずしも正確であるとは限りません。例えば、営業部門の担当者の経費申請の入力情報が誤っており、適切に会計処理が行われない可能性があります。現在はシステム化により一定程度は自動でチェックがなされますが、それでもエラーをシステムが見逃す可能性はあります。そうした時に、「本当にこの情報はあっているのだろうか。」という、批判的な思考が必要になります。
現場から上がってきた情報を鵜呑みにせず、本当に正しいのか、あるべきは何なのか、を立ち止まり思考する能力は経理として基本的なスキルです。
経理未経験者が経理に転職するには
ここまで、経理転職で求められるスキルをハードスキル・ソフトスキルの両面で解説しました。ここでは、経理未経験者が経理職として転職する方法について解説します。
事務系職種の中でも経理職は専門性が高いことから経験者が採用されやすい傾向にありますが、未経験者が採用されないわけではないです。しかし、昨今の不安定な経済環境の中、専門的なスキルが身につく経理職は人気が高く、何の準備・対策もなければ採用される可能性は低いと言えます。
未経験者の方で経理職への転職を考えている人は、まずは当記事で解説をした経理の仕事で求められるスキルを把握した上で、資格を取得したり、ソフト面で自身をアピールする方法を工夫することが重要です。
また、未経験者からの転職は年齢が若ければ若いほどよく、意欲や将来性を期待されて採用されるケースが多いため、早い段階、具体的には20代からの転職がおすすめです。
自身のスキルを一度棚卸してみましょう
経理転職を考える上で、経理経験者、経理未経験者ともに、まずは自身のスキルを一度棚卸することをおすすめします。
棚卸の結果、スキル不足があれば、
①現職でより経理的なスキルの向上につながる業務に積極的に取り組む
②会計系の資格を取る
というアプローチが有効になります。
①については、所属企業や部署によるところが大きいですが、機会があれば積極的にチャレンジするのが良いでしょう。
②については、日商簿記検定や日本の公認会計士、税理士、米国公認会計士(USCPA)といった資格が代表的です。その中でも、特にUSCPAは多忙な社会人でも無理なく学習・合格ができ、会計・英語が出来る人材として就職・転職市場でも高い評価を得ることができます。