経理のキャリアパスはどのようなものがある?実現のために必要なスキルもあわせて解説。
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現在、経理職に就いている方の中には、将来自分がどのようなキャリアを歩んでいけば良いか、迷われている方も多いことでしょう。経理は専門職であるが故に、一生経理業務で終わってしまうのではないか、他の領域へ拡張できないか、不安になっている方も多いと思います。
確かに、経理は会計の専門職であるためある程度領域は固定されているものの、その中でもその人のスキルセット次第で幅広いキャリアパスを実現することができます。もちろん、その実現のためには適切なスキルを身につける必要もあります。
当記事では、経理のキャリアパスと、実現のために必要なスキルについて、解説します。
経理職とは?
経理職とは、企業の取引を「仕訳」という形で記録・管理をし、決算書を作成し、経営層に報告をする職種です。経理の業務は「会計基準」というルールに基づいて行われており、会計に関して幅広く、深い知識が求められます。
また、企業によって業務範囲は異なるものの、余資運用・資金調達といった財務業務や、税務申告といった税務業務も取り扱うこともあります。会計基準や税法に関する知識が求められ、また、それらは絶えず変更がなされるため、常に学び続ける姿勢が大切な職種です。
経理が歩むべきキャリアパスは大きく分けて2つ!それは「スペシャリスト」か「ゼネラリスト」!
経理が歩むべきキャリアパスは、大きく2つに分けられます。
それは「スペシャリスト」か「ゼネラリスト」か、この2つです。
「そもそも経理は皆スペシャリストなのでは?」と思われる方も多いと思いますが、経理と言っても数多くの分野があり、それらの分野への精通度合いの広さや深さによって分かれるのが一般的です。
「スペシャリスト」はその名の通り、ある特定の分野に極めて深く精通している人材のことを指します。例えば、国際税務や連結決算といった、非常に難解であるものの、その分野に関しては何でも知っているような人材です。このケースの人材は、経理に関する他の分野の知識はそこまで詳しくないものの、自身の専門分野に関しては右に出るものはいないくらい深い知識、経験を備えています。
一方、「ゼネラリスト」は「スペシャリスト」とは真逆で、経理の広い分野について、満遍なく精通している人材で、一般的にイメージされる経理人材はこちらに該当します。基本的に、社内のジョブローテーションに沿ってキャリアを築くと、自動的にゼネラリストになるケースがほとんどです。
ゼネラリストとスペシャリスト、それぞれについて、必要なスキル及びメリットとデメリットを解説します。
1.スペシャリスト
①必要なスキル
特定分野において、圧倒的に高い専門性が必要です。中でも、国際税務や連結決算等、難解な分野の専門性が高いことが望ましいです。スペシャリストである以上、会計基準や税法等、専門知識を深く理解することが必要です。また、その専門知識を裏付けるだけの実務的な経験も必要です。
②メリット
特定の分野の専門性が高いため、ニッチな分野では需要が非常に高い。例えば、ピンポイントに国際税務担当を求めている求人があれば、ほぼ確実に採用に至ることになるでしょう。また、自身の得意分野を極められるため、異動等で自身のやりたいことができないといったストレスも比較的少ないです。
また、スペシャリストとして誰にも真似できない専門性があれば、将来的に独立することができるのも魅力的です。
③デメリット
特定分野でニッチなため特定の需要があれば転職等に強いのですが、そうした需要がない場合は転職等が難しくなってしまいます。つまり、タイミングに左右されてしまうことがゼネラリストよりも多いケースがあります。また、特定の分野のみを極めるキャリアになるため、人によっては飽きが来る可能性があります。そして、方向転換もゼネラリストと比較して難しい傾向にあります。例えば、ゼネラリストであればファイナンス分野の中の他分野でも活躍可能性がありますが、スペシャリストには難しいです。
2.ゼネラリスト
①必要なスキル
会計・税務・財務の3分野の中で、特定の分野に限らず、幅広い知識、経験を備え、どんな状況でも対応できる柔軟さが求められます。経理の基本的な業務である、仕訳の起票、財務諸表の作成、開示書類の作成、といった業務だけでなく、余資運用や資金調達といった財務関連業務や、税務申告等の等の領域も経験する必要があります。
②メリット
ゼネラリストとしてのキャリアを歩む上でのメリットは、まず第一として、経営層を目指すことができる、という点が挙げられます。一般的に、ファイナンス分野の人材の最終的なキャリアのゴールはCFO(最高財務責任者)であることが多いと思います。CFOの場合、一つの分野についてのみ意思決定を行うのではなく、会計・税務・財務といったファイナンス分野の全体を考慮しながら最適な意思決定を行う必要があります。その場合、一つの分野に精通するだけでなく、会計・税務・財務の幅広い分野に精通する必要があるため、スペシャリストよりもゼネラリストが重宝されるケースが多いです。
また、ファイナンス分野であれば異動や転職といった場面で多少の方向転換が可能な点も魅力的です。スペシャリストの場合は特定の分野の知識・経験に留まるため、方向転換が難しいですが、幅広い分野に精通しているゼネラリストであれば、既に持っている知識・経験が評価され、方向転換が可能になります。
そして、企業ではスペシャリストよりもある程度満遍なく実務をこなしているゼネラリスト的経理のほうが需要があり、求人も多いです。特定の分野に精通したスペシャリストの求人が多いのでは?と思われるかもしれませんが、求人を確認すると明らかに多くの分野に広く精通したゼネラリストを求める求人が多いです。
例えば、国際税務一筋のスペシャリストのケースを考えます。国際税務人材が必要な企業とはどのような企業でしょうか。
グローバルに展開している大企業であることは間違いないでしょう。また、国際税務に精通した人材が必要な企業は、税コストを最適化したい企業、つまり、大きく利益を上げることができている企業、ということになります。グローバルに展開をしており、税コストを最適化する必要があるほど利益が出ている企業、これだけでかなりの会社に絞られるのではないでしょうか。
一方で、経理という機能はどの企業にも必ずあるため、幅広く経理業務ができる人材はどのような企業でも採用可能性があると言えます。
スペシャリストと比較し、一つの会社に所属し長期的に活躍したい、という方に向いていると言えます。
③デメリット
ある程度ジョブローテーションに従ってキャリアを築くことになるため、場合によってはどっちつかずのスキルになってしまう可能性があるため、注意が必要です。そのため、自身のキャリアパスの方向性については慎重に検討が必要です。ジョブローテーションで自身の目指すスキルが思うように得られない場合は、転職も検討する必要が出てきます。企業の人事は必ずしも希望を聞いてくれる訳ではないので、ある程度運も必要と言えます。
また、スペシャリストと比べて特出したスキルがないため、他者との差別化が難しいと言えます。もちろん、全ての人が全く同じキャリアを歩んでいる訳ではないのでアピールの仕方次第の部分もありますが、ゼネラリストとしてアピールする場合は、自身の経験をより具体的に反してアピールするのが良いでしょう。
スペシャリストとゼネラリスト、それぞれのキャリアパスは?
ここでは、スペシャリストとゼネラリスト、それぞれの長期的なキャリアパスを、一部具体例を挙げて解説します。
1.スペシャリストの長期的なキャリアパス
①担当部長/役員
ファイナンス部門長やCFOからはレイヤーは下がりますが、担当部長/役員として特定分野の知識・経験から企業の成長に貢献することも、スペシャリストのキャリアとして代表的です。時にはファイナンス部門長やCFOが判断に迷う場面で、スペシャリストとして的確な提言をすることが求められる、非常に重要なポジションです。もちろん、ここでの活躍次第ではさらにレイヤーの高いファイナンス部門長やCFOといったキャリアも見えてくるでしょう。
②アドバイザリー
特定の分野に特化した、FASや企業税務に関するアドバイスをする、アドバイザリーもスペシャリストのキャリアとしては人気です。一企業内に留まらず、数多くのクライアントのファイナンス分野に関するアドバイザリーサービスを提供することになるため、社会への貢献度合いはより高いと言えます。
③独立
スペシャリストは特定の分野に関して他者を圧倒する知識や経験があります。そのため、その分野の知識や経験だけで業務を受けることができ、一企業内に留まらず、独立という選択肢も出てきます。独立するケースは基本的には公認会計士や税理士といった有資格者が多いですが、有資格者でなくとも自身の知識や経験を糧に独立するケースも見られます。
例えば、筆者の元同僚で、会計・経理のスペシャリストとして独立し、講師業やYouTuberとして活躍されている方がいます。その方は公認会計士試験合格後、監査法人に入所し、その後事業会社で経理として活躍され、独立をしました。会計・経理の専門家として、現場を知っている方ならではの視点で会計に関する発信をしています。確固たる専門性をベースに、自身がやりたいことを柔軟に実現できる点もスペシャリストの魅力です。
2.ゼネラリストの長期的なキャリアパス
①CFO(最高財務責任者)
ゼネラリスト的経理人材の最終的なキャリアパスの代表例は、やはりCFOでしょう。CFOは、企業の財務戦略の立案と実行を行う責任者で、会計・財務・税務に関する広範な知識と経験が求められます。
そのため、スペシャリストよりもゼネラリストの方がCFOを目指す上では向いていると言えます。
②ファイナンス部門長
CFOよりレイヤーは下がりますが、会計・財務・税務部門を束ねるファイナンス部門長として活躍することもできます。CFOに比べると、より現場に近い形で指揮を取る形となりますので、実務的な経験を活かすことができます。
キャリアアップの近道として資格は有効?現実について解説!
キャリアアップを考える上で、資格取得は近道なのでは?と考える方も多いと思います。現実はどのようなものなのでしょうか。
結論としまして、資格は経理に関するスキルを目に見える形でアピールすることができるため、有効です。例えば、日本の公認会計士、税理士、USCPAといった上級資格は比較的評価されやすく、より良いキャリアパスを築く上でも有利に働きます。特に、スペシャリスト的キャリアを歩む場合、資格は非常に有効です。
ただし、大前提として、何よりも実務経験こそが重要である点は留意してください。資格があっても実務経験がない場合は企業では評価されにくいため、まずは目の前の仕事に全力投球し、補完的に資格取得を目指すのが良いでしょう。逆に、資格がなくても圧倒的な業務経験さえあれば資格は必ずしも必要ではないので、資格がなくても焦る必要はありません
経理のキャリアパスを知って理想的なキャリアを描きましょう!必要に応じて転職アドバイザーにもご相談を。
ここまでで、経理が取りうるキャリアパスや必要なスキルについて解説をしました。スペシャリストとゼネラリストに大きく分かれますが、どちらに進むか次第でその人のキャリアは大きく変わります。
多くの人にとってはゼネラリストとしてのキャリアを歩むのが現実的ではありますが、既に資格を取得していたり、資格取得を目指している方は、ぜひスペシャリストとしてのキャリアを目指してみるのも良いでしょう。
それぞれ、キャリアの歩み方、戦い方は異なるため、しっかりと考えたうえでキャリアを歩むのが良いでしょう。
ただし、自分自身のみで考えると進むべきキャリアの方向性が分からなくなり、時には客観的な立場でのアドバイスが必要になってくるケースもあると思います。その際は、会計人材特化型のエージェントに相談することをオススメします。
会計人材特化型のエージェントであれば、多数の会計人材のキャリアを見てアドバイスをしてきているため、自身にとってベストな方向性を提案してくれる可能性があります。進むべき方向性に迷いが生じた場合は、相談をしてみましょう。
会計人材特化型のエージェントについては、以下の記事も参考にしてください。
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