CIAを取得すると就職活動でどう役に立つ?現役CIAが解説
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昨今、内部監査にご興味や関心を持つ学生が増えています。
内部監査従事者としては大変有難い状況ではありますが、その一方で、内部監査の新卒採用を積極的に実施する企業は決して多くはなく、他の職種より苦戦を強いられる学生は多いというのが現状です。果たして、新卒で内部監査系の職種に就くことは可能なのでしょうか。
本記事では、「CIA」と「就職」をテーマとしたキャリア形成について解説します。
具体的には、高校・専門学校・短期大学・大学を卒業した方が内部監査系の職種に就くことが可能なのか。また、内部監査系の就職におけるCIAとの関連性についても合わせて解説します。
内部監査系の職種にご興味がある方や内部監査系の職種に将来就きたいと考えている方は是非とも参考にして下さい。
・そもそもCIAとは?
・内部監査系職種の新卒入社について
・新卒で内部監査系の職種に就くためには
・内部監査系の就職におけるCIAとの関連性
・将来を見据えた選択
そもそもCIAとは?
CIAとは、Certified InternalAuditorの略称であり、公認内部監査人という意味です。
内部監査に関する指導的な役割を担っているIIA(The Institute of Internal Auditors:内部監査人協会)が認定する国際資格であり、内部監査人の能力および専門性を証明する目的として1974年より開始されたCIA資格認定試験は、世界約190の国と地域で実施されています。
経営者の内部監査に対する期待値が高まっている近年、内部監査人の能力および専門性を証明するCIA資格の重要性もまた高まっています。なんと一部の上場企業では、有価証券報告書において、内部監査部門にCIA資格保有者が在籍していること、CIA資格取得に向けて積極的に取り組んでいることを開示しているほどです。
とはいえ、CIAを取得しないと内部監査ができないというわけではありませんので、CIAは自身の内部監査の能力や専門性をさらに高めるために取得を目指すという方が多いです。
内部監査系職種の新卒入社について
新卒で内部監査系の職種に就職することは不可能ではありませんが、他の職種に比べると未経験者の求人数は少ないというのが現状であり、内部監査の実務経験を必須条件とする会社が多いです。
未経験者の募集が少ない理由は、習得しなければならない知識の量が膨大であることが関係します。
内部監査は監査対象部門の業務内容が正しく行われるかを調査し、その調査結果に基づいて保証と助言を行う業務ですが、こういった内部監査業務を行うためには、監査知識の習得だけでなく、監査対象部門の業務内容を正しく理解し、それに関連する業界動向や社内規程や法律などに精通していなければなりません。
故に、新卒社員にとって内部監査のハードルは高く、即戦力に至るまでに時間がかかってしまうため、実務経験がある方が優先されます。
新卒で内部監査系の職種に就くためには
新卒で内部監査系の職種に就くのは困難ではあるものの、決して不可能というわけではありません。次は新卒が内部監査系の職種に就くために、学生生活でどのような準備をすべきかについて解説します。
今からご紹介する方法は必ず全て実行する必要はありませんが、実行できている数が多ければ多いほど、企業からの印象は良くなるため、是非ともご検討下さい。
インターン・アルバイトによる経験
1つ目の方法は、アルバイトやインターンという形で内部監査に携わることです。
数はかなり少ないですが、内部監査業務をアルバイト募集している会社や学生インターンを募集している会社が一定数存在しますので、そういった会社の募集に応募し、実際に目で見て肌で内部監査を感じながら実務経験を積むのですが、この方法は他の方法よりも企業からの印象が良くなる可能性が高いです。
何故なら、内部監査の求人において、実務経験を重視する傾向があるからです。
インターンやアルバイトという形であっても、内部監査の実務経験を積んでいるというのは、未経験者より優遇される可能性が高いです。また、学生の間に内部監査の実務経験を積んでいるという積極性も企業から見るとポジティブに捉えられるため、そういった観点でもメリットは多いです。
資格の取得
2つ目の方法は、内部監査に活きる資格を取得することです。
最初にご紹介したCIAの資格取得を目指すのが理想ではありますが、CIAは実務経験が必要な資格であるため、学生の段階で取得することはできません。
しかし、内部監査に役立つ資格は他にも存在しますので、そういった資格取得を目指し、資格を取得するために勉強した内容をアピールポイントに繋げることは可能です。
例えば、「ビジネス実務法務検定」や「ビジネスコンプライアンス検定」などは、法務・コンプライアンスに関する内容がメインとなりますので、準拠性監査のベースとなる知識の習得を目的に合格を目指し、そこで学んだ内容を企業でどのように活かすことが出来るか説明できるようになると、アピールポイントに繋がるでしょう。
他にも、将来的にCIAの資格取得を目指すために、公認内部監査人の試験範囲に含まれているITや財務会計などに関する資格取得を目指すというのも1つの方法です。
例として、「ITパスポート」や「情報セキュリティマネジメント」や「日商簿記検定」などが該当します。
「ITパスポート」や「情報セキュリティマネジメント」に関しては、IT監査のベースとなる知識の習得を目的に合格を目指しますが、ITに関するリスクと統制方法にはどのようなものがあるかを細分化して分析できるレベルまで落とし込めると、こちらもまたアピールポイントに繋がるでしょう。
「日商簿記検定」に関しては、財務諸表監査のベースとなる知識の習得を目的に合格を目指しますが、学生時代に簿記に関する知識を持っていると、内部監査に限らず、様々な場面で活用することが出来ますので、汎用性が高いです。
内部監査に関する理解
3つ目の方法は、内部監査に関する理解を深めることです。
未経験者歓迎の内部監査の求人情報を見ていますと、「内部監査業務への興味・関心」を必須条件としている会社が一定数存在しますが、興味や関心というのは、内部監査に関する理解を表します。
例えば、内部監査のトレンド、業界情報、一連の内部監査業務などについてきちんと勉強し、自分が内部監査人だと仮定した時にどのように内部監査を行うことができるかについて、漠然とした内容で構いませんので、そのイメージを説明できるようになっておくことが望ましいです。
まだ未経験者という状態ですので、内部監査の実務内容と多少異なっていても気にする必要はありませんが、なぜ内部監査に興味を示したのか。内部監査にどこまでの熱量があるのかなどについては、企業に説明できるレベルまで落とし込む必要があります。しっかりと準備を行って頂きたいです。
内部監査系の就職におけるCIAとの関連性
新卒で内部監査系の職種に就くための方法についてご理解いただいたところで、次は内部監査系の就職におけるCIAとの関連性について解説します。
先程も申し上げた通り、CIAは実務経験が必要な資格ですので、学生の間に取得することはできませんが、就職と全く関連性がないわけではありません。内部監査系の就職は将来を見据えた選択の1つとして捉えて頂くと良いです。
将来を見据えた選択
筆者としては、内部監査系の職種に就く全ての内部監査人には、是非ともCIAの取得を目指して頂きたいと考えます。何故なら、全ての内部監査人がCIAで学ぶ共通の内部監査基準を理解することで、偏った判断や主観的要素を可能な限りなくし、部門として一定の監査品質を保つことが出来るからです。
もし、内部監査部門で一定の監査品質を保つことが出来なくなりますと、内部監査部門に所属する内部監査人の間で、能力の差が如実に表れ、リスクベースで客観的な内部監査を部門として行うことができなくなってしまいます。そのため、人材育成という観点でもCIAの取得は必要不可欠であると考えます。
また、内部監査は社会人経験が長いシニア世代の方が在籍していることが多いですが、筆者としては、ミドル世代やヤング世代の内部監査人も増えていくべきであると考えており、シニア世代にはない新たな感性や柔軟な考え方なども内部監査部門に取り入れ、「内部監査=シニア世代が行うもの」というイメージは払拭されるべきです。
新卒が内部監査系の職種に就くことは決してゴールではなく、将来的には、スキルアップのためにCIAを目指して頂き、最終的には、内部監査部門を引っ張っていけるような次世代の立役者になって頂きたいです。
内部監査系を中心としたキャリア形成を考えるなら、内部監査系の就職はCIAを実現するための通過点に過ぎず、CIAの取得もまた通過点に過ぎません。そういった将来を見据えた選択として、監査業界に飛び込むことは素晴らしい選択であるといえます。
CIAを活かしたキャリア形成を目指そう
ここまで読んでみて、いかがでしたでしょうか。
学生の間にCIAを取得することはできなくても、2年以上の実務経験を積むことが出来た後にCIAに挑戦することは十分可能です。
CIAは取得が難しい資格ですが、難しいだけあって、きちんと勉強して取得することができた内部監査人は、様々な内部監査業務を高い品質でこなすことができます。
能力の高い内部監査人が増えることは、監査業界全体で見れば、大変素晴らしいことです。
CIAは市場価値も高いですし、実務において学んだ内容を自社の内部監査に組み込むといったことができるようになると、他の内部監査人との差別化要因にもなります。
名刺にも記載することができますので、是非このタイミングでCIAの取得を目指し、プロフェッショナルとしての称号を得ましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。