未経験でも内部監査はできる?現役CIAが解説
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- 内部監査・コンプライアンス・リスク
昨今、内部監査業務が老若男女を問わず注目を集めています。
しかし、内部監査は業界や社内情報などに精通していなければならない高度な業務であることから、未経験者を積極的に採用する企業はあまり見かけません。
では、未経験者が内部監査業務を行うことは不可能なのでしょうか。
本記事では、「内部監査」と「未経験」をテーマとしたキャリア形成について解説します。
具体的には、内部監査は未経験でも行うことができるのか。また、行うことができると仮定して、どのような職務経験があれば内部監査人になることができるのかについて解説します。内部監査についてご興味がある方や今後のキャリア形成の一環として内部監査を検討している方は是非とも参考にして下さい。
・可能であるが、その道は険しい
・未経験者が内部監査人になるまで
・補足:そもそも内部監査ってどういう仕事?
可能であるが、その道は険しい
結論から先に申し上げますと、未経験者が内部監査系の職種に就くことは可能ですが、その道は険しいと言えます。
何故なら、内部監査業務に求められる知識には、主に法令・規則・規程などが該当するため、未経験者からすると非常にレベルが高いからです。企業もそれが分かっているからこそ、内部監査経験を重視しています。ですが、誰しも最初は未経験者です。現役CIAの筆者も例外ではありません。
未経験者が内部監査系の職種に就く方法は大きく2つ存在します。
1つ目は、転職市場において「未経験者歓迎」という形で募集している企業に応募して採用されるパターンです。
2つ目は、社内の内部監査部門へ異動希望を出すか、社内からの人事命令により実現されるパターンです。ほとんどがこのパターンで内部監査系の職種を経験します。
いずれの方法も今までの職務経験から判断されることが多く、内部監査に近い能力や経験を積んでいなければ実現することは難しいです。
つまり、未経験者が内部監査系の職種に就くことは可能であるものの、上司から内部監査系の部署異動命令を待つような受け身の姿勢は悪手であり、それ相応の職務経験が必要なのです。
未経験者が内部監査人になるまで
未経験者が内部監査系の職種に就くことの難しさについてご理解いただいたところで、どうすれば未経験者が内部監査人として採用・異動することができるのかについて、3段階に分けて解説します。
これらの段階を必ずしも全て実施する必要はありませんが、内部監査というのはただ希望を出せばなれるような職種でもないため、本気で内部監査人になりたいというお気持ちが強いのであれば、是非1つでも参考にして頂けると幸いです。
第1段階:上司に相談する
第1段階は、上司に相談することです。
相談内容はキャリアパスに関するものであれば何でも構いません。
例えば、なぜ内部監査人になりたいのか。内部監査業務のどこに興味を示し、今後どのようなスキルを身につけて活躍したいのかなどは話しておくと良いです。
上司に相談するべき理由は、自身の今後のキャリアパスについて、上司と認識を合わせるためです。また、可能であれば、内部監査に近い業務(リスク管理・コンプライアンスなど)を経験するための職場環境を作ってもらってください。そういった経験の積み重ねが、内部監査系の職種への異動できる可能性を高めます。
もし、今の職種が内部監査業務に関連しない職種である場合、先に内部監査に関連する部署(リスク管理・コンプライアンスなど)に異動して経験を積むべきなのか、今の職種内で内部監査に近い仕事(リスク管理・コンプライアンスなど)を担わせて頂く形で経験を積むことができるのかについて、権限があるか否かを問わず相談しておくと良いでしょう。
第2段階:ギャップを分析する
上司に自身のキャリアパスについて相談した後、次に行うのはギャップを分析することです。
具体的には、内部監査人を目指す上で自身に足りないものを分析して頂くのですが、ほとんどの場合、埋めなければならないギャップとして「知識」と「経験」が該当します。
もし、第1段階において、上司から内部監査系の職種に異動するための必要な要件について具体的な指示がなされているのであれば、それに従ってギャップを埋めれば良いですが、恐らくほとんどの場合、そういった指示はないことが多いです。
そのため、自身で「知識」と「経験」に関するギャップを可能な限り埋めなければなりません。
まず「知識」についてですが、これは内部監査に関連する知識が該当しますが、分かりやすく示せるものとして資格が該当します。
内部監査に関係する資格といえば、公認内部監査人が挙げられますが、公認内部監査人は実務経験が必要な資格なので、未経験の段階で取得することは不可能です。なので、それ以外の資格に挑戦します。
例えば、サーティファイのビジネスコンプライアンス検定やリスクマネジメント協会のリスク検定など、内部監査に関連する知識に関する資格は他にも存在しますので、そういった資格の勉強を行うことで知識のギャップを埋め、資格を取得することでアピールポイントにするという方法がお勧めです。
「経験」については、なるべく内部監査に近しい経験を積むことです。
いきなり内部監査人になれないとしても、内部監査に近しい経験を積み上げて、内部監査系の職種への異動が実現できるよう努力しなければなりません。
お勧めは、リスク管理やコンプライアンスに関する経験です。これらの経験は、内部監査業務で活きることが多く、内部監査以外の職種でも何かしらの形で関わってくることが多い領域ですので、職場の状況にもよるかもしれませんが、上司から理解を得ることができれば、現状の業務内容から派生させて取り組むことは可能です。
第3段階:結果の見える化と継続
ギャップを分析して行動に移した後は、結果を見える化し、継続していくことです。
結果の見える化については、内部監査に関連する知識や近しい経験を積み上げた成果について、上司や部下などの関係者が一目見てわかるように見える化します。
例えば、リスク管理に関する業務を行い続けたと仮定した場合、どのような点がなぜリスクであると判断したか。また、そのリスクを管理するためにはどのような仕組みが必要なのかについて、自身が今まで行ってきたリスク管理業務と合わせて説明できると、リスク管理の重大性を関係者に認識させるだけでなく、自身がリスク管理を通じて本気で内部監査人を目指していることを上司にアピールできる点がポイントです。
そして、この一連の取り組みは継続して行うことに意味があります。
リスク管理はほんの一例ですが、このような形で知識と経験によるギャップを少しずつ埋めていき、異動希望を出し続けることが、内部監査部への異動の近道になります。
もし、上記の取り組みを継続しても内部監査部門への異動が叶わなかった場合、今まで積み上げてきた知識と経験を武器に転職活動を行うという選択ができる点もメリットです。
職務経歴書に記載することができますし、面接でのアピールポイントにすることも可能ですので、全く無駄にならないということです。
補足:そもそも内部監査ってどういう仕事?
ここからは補足として、内部監査とはどういう仕事内容について簡単に解説します。
内部監査とは、企業内の独立した内部監査部門(会社の規模によっては内部監査室)が、各部門の業務や財務会計などを調査・評価し、報告や助言を行います。
内部監査の目的は様々です。例えば、業務の有効性と効率性の向上、経営目標の達成、問題の早期発見と解決、職場環境の改善などが該当します。
内部監査は企業内の様々なリスクや問題を解決する上で有効な手段であり、健全な経営を維持するために実施されます。また、内部監査の中で、業務の適正性、コンプライアンス、ガバナンス、リスクマネジメントなどを評価・監視し、内部統制が適切に機能しているかを確認することもあります。つまり、内部監査と内部統制は密接に関わるものであり、切っても切り離せない関係なのです。
内部監査は必ず行わないといけないというものではありませんが、大企業や上場企業にとっては必要不可欠な業務になっています。
実際に2006年に改正された会社法では、大企業において内部統制整備が義務化され、内部監査を設置しなければなりません。この流れを鑑みて、中小企業の中でも、内部監査部門を設立し、内部統制と合わせて内部監査体制を構築する企業も増えています。
現時点のキャリアに合わせた準備を行おう
ここまで読んでみて、いかがでしたでしょうか。
今回お伝えした3段階のどれかが欠けてしまうと、内部監査系への異動は難しくなります。ただ単に「内部監査系の職種に異動したいです」と言っておきながら、それに伴った行動を起こせていないなら、早急に改善すべきです。
継続して行動で示し続け、本気で内部監査系の職種で活躍したいという気持ちを全面的に出すようにしましょう。発言と行動が一致していれば、その気持ちが報われる日はきっと訪れます。
本記事を読んで下さった皆様のご活躍を心からお祈り申し上げます。本記事が何か1つでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。