求人票の条件に簿記スキルが多いのはどうして?
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簿記に関する求人は年々増えており、簿記の需要が社会全体で高まっています。
求められる簿記スキルは企業によって様々ですが、一定の簿記スキルと簿記に関連する実務経験があれば、大抵の求人票に対応することが可能です。また、簿記に関する求人票には共通した特徴があり、必ず持っていて欲しい簿記スキルと実務経験は必須要件として明記されていることが多いです。
では、どこまでの簿記スキルと実務経験が必要なのでしょうか。
本記事では、「簿記」と「求人」をテーマとしたキャリア形成について解説します。
具体的には、簿記に関する求人募集にはどのようなものがあるか。また、転職市場では簿記スキルの何が評価に繋がるのかについても、簿記スキルを必須要件とする職種と歓迎要件とする職種に分けて解説します。簿記スキルを活用して転職を検討されている方やジョブチェンジを検討されている方は是非とも参考にして下さい。
・簿記スキルがあるだけだと不十分
・簿記スキルを必須要件とする求人募集について
・簿記スキルを歓迎要件する求人募集について
・補足:そもそも簿記って何?
簿記スキルがあるだけだと不十分
求人票でよく「日商簿記検定2級を取得している方」や「一定の簿記スキルをお持ちの方」などを条件とする会社を多く見かけますが、その理由は、簿記スキルが会社の3大経営資源である「ヒト・モノ・カネ」の「カネ」の部分を理解する上で必要不可欠なスキルだからです。
ですが、転職市場においては、ただ簿記スキルがあるだけですと不十分で、簿記スキルを使って今までどのような職務経験を積んできたかが評価されます。
つまり、大切なのは簿記スキルを持っているかではなく、簿記スキルを活用して今までどのような成果を出すことができたかです。
ただ、求人票の中には簿記スキルを必須要件とする会社もあれば、歓迎要件とする会社もあります。
読んで字の如く、必須要件の場合は簿記スキルがなければならず、歓迎要件は必ずしも簿記スキルは必要ではないということです。
簿記スキルを必須要件とする求人募集について
まずは、簿記スキルを必須要件とする求人募集にはどのようなものがあるか解説します。
基本的には、お金に関する部署や事務所は簿記スキルを必須要件としていることが多いです。また、お金に関する部署以外でも、業界や職位によって簿記スキルを必須要件としている場合もありますが、これは会社によって異なりますので、今回は説明を省略します。
今回は、必須要件として記載されていることが多い職種を2点ほどご紹介します。
①経理・財務職
1点目は、「経理・財務職」です。
経理も財務もお金に関する部署ですが、具体的な職務内容は大きく異なります。経理では、会社全体の日々のお金がどのように動いているかなどを細かく記録します。具体的には、伝票などの原子証憑から総勘定元帳や試算表などを作成するなどして、お金がどのように動いているか可視化します。
財務では、各部署が立てた予算や中長期計画などをベースとし、今後会社として必要なお金について管理します。具体的には、新規事業の資金を調達したり、会社全体の予算状況を管理するなどを行います。
いずれも簿記スキルがなければ職務を全うすることはできません。
②会計事務所
2点目は、「会計事務所」です。
会計事務所は、読んで字の如く、会計関係の仕事を専門的に行う事務所です。具体的には、個人事業主・フリーランス・事業会社などのお客様と顧問契約を結び、経理や税務関係などの業務を引き受けて行います。
会計事務所には、公認会計士や税理士が在籍していることが多く、それぞれが持つ独占業務も合わせて引き受けます。なので、会計事務所は需要が高いですが、転職においては、お金に関する部署に転職するよりも求められる簿記スキルは高くなる傾向があります。
簿記スキルを歓迎要件する求人募集について
次は、簿記スキルを歓迎要件とする求人募集について解説します。
歓迎要件ですので必ずしも持っておく必要はありませんが、主に簿記スキルを持っておくことが望ましい職種が該当します。
今回は、歓迎要件として記載されていることが多い職種を2点ほどご紹介します。
①営業・販売職
1点目は、営業・販売職です。
営業活動や販売活動を実施する最大の目的は、売上高や利益を向上させ、予算を達成させることにあるかと思いますが、簿記スキルがあれば、各勘定科目の要因分析などができるようになり、それに合わせた改善活動が可能になります。
また、会社によっては、各部門に簿記に詳しい人材を何人か投入し、部門長と連携して予実管理や財務諸表分析などの営業に関連した会計業務を行わせる場合もあります。
時には、営業に関連した会計業務をアウトソースする場合もありますが、人員コストを考慮すると、内製化できた方が良いです。
簿記スキルがなくても営業活動や販売活動は可能ですが、簿記に詳しい人材がいることで、予算の達成やコストの見直しなどが良くなる可能性が高くなります。
必須レベルではないものの、簿記スキルを持っていることが望ましいです。
②経理・財務以外の管理系部署
2点目は、「経理・財務以外の管理系部署」です。
具体的には、人事・労務・総務・法務・内部監査系・情報システムなどの管理部署です。
これらの部門は営業・販売職と違って利益を生み出しませんが、コストを徹底的に管理して、余計な支出を抑える責任があります。経理・財務部門ほどの専門的な簿記スキルは不要ですが、コストを徹底的に管理していく上では、簿記スキルがあると望ましいです。
また、各部門長や中間管理職に就いている方は、予算の策定や経営会議などの場面で簿記スキルを活用することがありますので、そういった方々は一定の簿記スキルを持っておいた方が良いです。
補足:そもそも簿記って何?
簿記とは、企業規模の大小や業種、業態を問わずに、日々の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を明らかにする技能のことです。
簿記を学ぶことで会計知識を身につけることができますが、その会計知識を活用することで、財務状況や経営状況を理解する力・経営分析力・予実管理力などを高めることができます。
特に、ビジネスの基本であるコスト感覚を養うことができる点がポイントで、このコスト感覚は社会人ならば必ず身につけておくべきです。何故なら、全ての業務活動がコストと密接に関わっているからです。
例えば、営業部門の場合、コスト感覚を養うことで損益計算書(PL)に対する分析が行えるようになり、日々の営業活動で見直すべきポイントを明らかにし、改善させることが可能となります。実際に、会社によっては、営業部門の責任者になるためには日商簿記3級の取得を必須要件としていることもあり、この事からもコスト感覚を養うために簿記を勉強することの重要性はご理解頂けるかと思います。
今回は営業部門を例に挙げましたが、営業部門に限らず、今後のキャリア形成で役職に就きたいというお気持ちが強いのであれば、コスト感覚を養うことは必須です。言い換えると、コスト感覚がないことで役職に就くことができないという状況は非常にもったいないです。
企業の最大の目的は、利益の最大化によって持続的な成長をもたらし、企業価値を向上させることにあります。企業価値を向上させる方法は様々ですが、効率的な経営を目指して各部門の生産性を高める上で、会計や財務に関する要素は必ずどこかで関わってきます。まだ簿記について何も知らないという方は、是非これを機に簿記について理解を深めることをお勧めします。
参照:簿記とは
簿記スキルは汎用性が高い
ここまで読んでみて、いかがでしたでしょうか。
転職市場においては、「どれくらい簿記スキルを持っているか」と「簿記スキルを活用した経験量と質がどれくらいか」がセットで求められます。
簿記スキルを活用し、より専門性を高めたいのでしたら「経理・財務職」もしくは「会計事務所」が主な転職先となります。但し、実際に転職するとなった場合、最低でも日商簿記2級以上の資格と3年以上の簿記スキル活用経験はあった方が良いかと思います。
一方で、「営業・販売職」の方や「経理・財務以外の管理系部署」などにお勤めの方は、簿記スキルは必須ではないものの、簿記スキルを持つことによるメリットは多く、活用すればするほど自部門に大きく貢献することができます。
こういった経験も職務経験で記載することができますので、歓迎要件だからといって簿記スキルがいらないというわけではありません。つまり、簿記スキルは汎用性が高いということです。是非、求人票にマッチした人材を目指すために、簿記スキルを培い、様々な場面で活用してみて下さい。
本記事が何か1つでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。