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2019/06/16

第1回:「IFRSをめぐる現状」

はじめに

現在、会計の世界に一つの大きな動きが起きています。IFRS(国際財務報告基準)への世界的な統一の流れです。

会計基準をめぐる昨今の動向は、特にU.S.CPAの取得を目指される方にとって関心が高く、また一面で不安に思われることもあると思います。

IFRSへの流れはU.S.CPAにとってプラスにもマイナスにも作用すると思われますが、
結果としてUSCPAにはプラスに作用する面が多いと私は考えております。
今後、3回にわたって連載方式でIFRSを概観していきます。

1.IFRSとは

IFRS(国際財務報告基準, International Financial Reporting Standards)とは、世界的に承認され遵守されることを目的として、IASB(国際会計基準審議会)によって設定される会計基準の総称です。

EUにおいては、2005年に域内上場企業に対するIFRS適用が義務化され、これがIFRS導入への動きの第一段階となりました。その後、採用国が急拡大し、現在ではヨーロッパを中心に、約100ヶ国がIFRSを自国基準として採用(Adoption)しています。カナダ、インド、韓国でも2011年からの採用を決定しています。

2.米国の方針転換

IFRSをめぐる動きの第二段階といえるのが、IFRSに対する米国の方針転換です。
これはまさに現在進行中といえるものです。
米国は、当初自国の会計基準(U.S.GAPP)を保持しつつ、IFRSとの差異を段階的に解消していく(Convergence)方針をとっていました。

しかし、各国がIFRS採用への流れを強める中、2007年11月にSEC(米国証券取引委員会)は、外国企業に対して国際会計基準で決算書を作成することを容認しました。

さらに本年8月27日には、2014年から段階的に米国内上場企業へのIFRSの義務付けを行うとのロードマップを発表しました。これは、従来のConvergenceの方針から、Adoptionへの転換を意味するものです。

なお、義務化するかどうかの最終決定は2011年に行われます。

3.日本におけるIFRS

日本においては、2011年までに日本の会計基準とIFRSとの差異を解消してく方針(Convergence)が表明されています。これは米国の従来の立場に近く、IFRSの採用(Adoption)とは距離を置く立場が取られています。

しかし各国がIFRS採用への流れを強め、さらに米国がIFRS採用の可能性に言及した現在、日本が現在の立場を維持することは困難となってきています。
日本公認会計士協会は「日本でも国際会計基準を受け入れる方法について真剣な検討を行う必要がある」との提言を出しました。

日本は現在、既存の会計基準を変容させつつも保持することと、IFRSの採用に転換することと、どちらがより国益に資するかを判断する岐路に立たされているといえます。

いずれにしもて、日本における会計基準をめぐる動向は米国にもまして流動的といえます。

CPAを勉強されている方、既に合格者されている方にとって重要なことは、IFRSをめぐる
このような流れがU.S.CPA資格にどのような影響を与えるかではないかと思います。
また、多くの方にとって、制度変更によって会計・監査系の労働市場が
どのように変化するかも、主要な関心事かと思います。

次回以降、IFRS導入後のUSCPAの役割、IFRSとU.S.GAAP(米国会計基準等)について述べさせていただきます。