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2019/07/04

USCPAの転職先④「事業会社で長期キャリアを構築!経理財務 編」

USCPA(米国公認会計士)の転職先シリーズの第4回目、今日は外資系・日系の「一般事業会社」についてご紹介いたします。

USCPAの転職先

①監査法人

②税理士法人

③コンサルティングファーム

④一般事業会社(外資系企業を含む)

⑤海外会計事務所

事業会社における管理部門の役割

まずはじめに、皆さんは一般事業会社の管理部門(コーポレート部門)にはどういったものがあるかご存知ですか?

会社経営を支える上での、ヒト・モノ・カネ・システム等のインフラを整え、企業がどういった方向に進むべきか舵取りをする…実はそういった重要な役割を果たしているのが管理部門です。

少しイメージをお持ちいただくためにも具体的な部門を挙げでみましょう。

「人事」「経理財務」「総務」「IT/システム」「IR/広報」「経営企画」「内部監査」「法務」といったところが皆さんにとっても耳馴染みが良いかもしれませんね。

事業会社は「即戦力」性を重んじる!

事業会社と一言でいっても「外資か、日系なのか」「上場か、非上場なのか」「大手か、ベンチャーなのか」と、様々な切り口で分けることができます。

ただ、どの切り口で見た場合も中途採用者に求めるものは似通うものがあります。

それは「事業会社は即戦力を求める」傾向にあるということです。実際に大手転職求人サイトで公開されている求人票を見ていただいても「決算経験○年以上」「月次決算を主導で担当できる方」というように、一定年数・レベル以上の経験が必須条件として挙げられています。

特に大きな企業であればあるほど、実務経験者を求めることが多いでしょう。でも、それは何故でしょうか?

答えは企業の人材育成に関するスタイルに起因します。まず大前提として、人が企業で勤める上で習得すべき内容は2つ、「自社のこと(風土・ルール・業界情報)」と「実際の担当業務」です。

この2つを真っ新な状態から、人並みの状態まで育てるのは、企業にとって非常に時間と労力がかかります。(そういう意味では新入社員向けの研修は、企業がお金と時間をかけて提供している重要な先行投資なのです!)

ですから、企業としてはコスト削減のために「自社のこと」もしくは「担当業務」のどちらかを既に習得した方を採用したい…というのが本音であり、中途採用の位置づけです。(ちなみに「自社のこと」を習得しており、「担当業務」が未経験の場合は、社内異動などが挙げられますよ。)

本来であれば、ベンチャーも東証一部上場の大手企業も経験者が欲しいのは山々です。しかし人材難であるこのご時世、就職氷河期のように企業が「人」を選ぶ時代から、いつの間にか人が「企業」を選ぶようになってきました。

そのため大手上場企業と比較した際に知名度・福利厚生等で霞んでしまうベンチャーや中小企業では、必須条件を広げて「未経験可/資格取得者であれば実務経験不問」といった募集の仕方をし、多くの方に興味を持ってもらえるよう工夫しているのです。

USCPA取得者の中で、事業会社勤務を希望する方の多くが「グローバル展開している日系企業」や「外資系企業」で、会計に携わる仕事がしたいと考えています。ただグローバル展開している企業は、規模感的にも大きいところが多く、前述のように経験者採用にシフトしている可能性が高いです。

そのため会計未経験の方が「USCPAを取得したので、上場事業会社で経理職に!」という場合は、やや転職活動においても苦戦を強いられる傾向があります。

その一方で、実務経験を持ち合わせている方であれば、USCPA取得によって「グローバルなビジネス知識を有している」「IFRS※1に対応できる」人材と捉えられて、より大きな事業会社や外資系企業に転職することもできるでしょう。

「それじゃあ、事業会社への転職は出来ないのかな…」と思ったUSCPAの皆さん、どうか諦めないでください!!

現在、実務経験をお持ちでない方もご安心ください。USCPAを切り札に事業会社へと転職する方法をご紹介しますので、ぜひ本記事の内容を最後まで読んでみてくださいね。

「お金」のスペシャリスト:経理財務

仕事内容

経理財務の業務は多岐に渡り、大きく分けると「財務」「財務会計」「管理会計」の3つに区分されます。

事業会社の規模感によっては、それぞれ縦割りで「財務チーム」や「管理会計課」というように分かれていることもありますし、あえてチーム分けなどせず、経理財務部として一人一人が横断的に3つの業務に携わるスタイルの企業もあります。まずは、それぞれ代表的な業務を下記に挙げてみましょう。


●財務

:資金調達・資金運用・資金操作・債務支払・債権回収 等

会社は様々な社外/社内取引を動かしながら事業を展開しています。その際の資金を滞りなく会社の中で流すことが財務業務の大きな役割です。

資金は会社を動かす上で重要な「血液」に例えられ、血液は過不足なく、常に流し続けることが求められます。

物品の購入や利用に伴う支払によって血液が減ってしまった場合も、足りなくなった血液を増やすために運用・調達することも大切な役目です。

●財務会計

:売掛金・買掛金・小切手・手形の管理、決算、税務申告、開示資料の作成 等

財務会計と後述の管理会計を理解する上で重要となってくるのが「目的」と「誰に向けた」ものであるかということです。

財務会計の重要な業務として会社の決算書作成が挙げられます。作成された決算書は株主や取引先を含む「社外」に向けたものです。財務会計は別名「制度会計」とも言われており、法制度に準じて会社の決算書を作成します。

法制度に基づくため、どんな企業が作ったとしても、その内容は統一されています。統一されているからこそ、株主や取引先は企業同士の比較をすることができるのです。また、財務会計は「過去」を見るための会計と言われており、会社の業績を知るための重要な書類です。

●管理会計

:予実管理・予算編成・原価計算・損益計算書・中期経営計画策定 等

財務会計が「過去」を見るための指標であることに対し、管理会計は「未来」を写すものだと言われています。

管理会計は法制度に準じるわけではないので、決まったフォームはなく、会社によって自社のやり方がある場合が多いでしょう。

ここで作成される数値や資料は、会社の経営指針を決める上で、意思決定を支える重要な数値作りを担っています。

そのため経営陣や上層部などの「社内」に向けた、会社の中期経営計画の策定、また計画に基づいた事業部毎の予算分配、前年度の実績との対比等に従事いただきます。

求人票に書かれていない、企業の本音を知ろう!

求められる要件

前述のように事業会社の求める人材は「即戦力」性を重視する傾向にあります。特に大企業であればあるほど、その色は濃くなるでしょう。求人票にも「実務経験○年以上」と記載されているケースも少なくありません。

必須の実務経験年数を満たしている場合、次に企業が注目しているのは貴方が在籍していた「企業の規模感、上場・非上場の有無」です。年商1億と年商2000億の企業では、日々扱う金額の大きさ(桁)が異なります。

結婚生活でも金銭感覚のズレは大きな問題になりやすいですよね。経理ポジションでも同様のことが言え、なるべく同規模の数字を扱っていた方が好まれる傾向にあります。

また経理業務の重要な役割である「決算書作成」。上場企業は法律で監査法人の会計監査を受けることが義務付けられています。(参照:USCPAの転職先① 未経験でも監査法人は狙える!

そのため厳格な作成手法、また監査法人から監査を受ける際の対応方法は、上場企業で経験を積んだ方でないと最初はイメージがしづらいかもしれません。

そこで効率良く上場企業経理の仕組みを理解し、経理実務経験と同等のスキルとして捉えてもらえるのが、監査法人での会計監査業務なのです。

事業会社の経理担当者は決算書を「作る」側の人間ですが、監査法人は作られた書類を「分析・チェックする」側です。

そのためには決算書の作り方・成り立ち等を知っておかなければ対応は難しく、上場企業経理と同等の知識を兼ね備えていると評価されています。(ただし仕訳等の実務ができるわけではないので、あくまでも「知識」ベースの理解です。転職後は仕訳作業や日次経理業務等、しっかりキャッチアップすることが大切です。)

そのため、会計未経験のUSCPAの方が「上場事業会社で経理職に!」と希望される場合は、監査法人の会計監査経験を積まれることをお勧めしています。会計監査を経て、その後、事業会社の経理部門に転職するというセカンドキャリアは十分可能性に溢れた選択肢なのです。

…と、ここまでが事業会社が中途採用に求めるモノと、具体例の一つとして「経理財務」に特化してお伝えしました。皆さんにとって事業会社で働くことのイメージが深まれば幸いです。

思ったよりも皆さんにお伝えしたい内容がてんこ盛りになってしまいました!残す業務内容は「経営企画」「内部監査」となりますが、こちらについては次回説明させていただきます。


※1International Financial Reporting Standards 国際会計基準審議会(IASB)によって設定された会計基準の総称