【転職ノウハウ】USCPA転職活動⑤ BIG4 FAS系コンサル、第一関門はポジション理解と適性の結びつけ!
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vol.16 USCPA転職活動⑤ 「BIG4 FAS系コンサル 第一関門はポジション理解と適性の結びつけ!」
「USCPA転職活動」と銘打って新シリーズを始めておりますが、いよいよ折り返しを迎えました。
今日はコンサルティング業務の中でも、BIG4におけるFAS(Financial Advisory Service)に特化してお伝えしたいと思います。
我々もBIG4 FAS部門にて採用セミナーを開催することもありますが、毎回多くの方がご参加いただく人気の転職先です。
BIG4 FASの業務領域は(法人にも寄りますが)大きく分けて2種類。「クライシスマネジメント」と「M&A」に分かれます。
前者のクライシスマネジメントの代表的なポジションは「事業再生アドバイザリー」「フォレンジック」が挙げられます。
いずれこの「クライシスマネジメント」の具体的な業務内容についても皆さんにご紹介できればと考えておりますが、今回はUSCPA(米国公認会計士)との親和性ということで後者の「M&A」に焦点をあて、その選考フローや特徴、選考上の重要なポイント等を解説していきたいと思います。
まずはM&A業務における各ポジションを理解しよう
全体としては、既にご紹介したBIG4監査法人(USCPA転職活動①)の選考フローと重複が多くみられます。
ただしポジションによっては一部選考フローが異なることも!まずは具体的な説明の前に、M&A業務における4つの大きなポジションを復習しておきましょう。(USCPA転職活動③)
①デューデリジェンス(Due Diligence)
ターゲット企業を財務・人事・法務等の側面からリスクの洗い出し、調査を行います。
財務領域であれば、会計監査をギュッと短期間のプロジェクトとして行うイメージをお持ちいただけると良いかもしれません。
②バリュエーション(Valuation)
いくらで売る/買うべきなのか価格設定を行います。ブランド力、社会的評価といった金額が付けにくい無形資産から、建物・現金等の有形資産まで総合的に反映させ、価格を算出します。
③コーポレートストラテジー(Corporate Strategy)
M&Aを実行するにあたって対象企業のビジネスモデルを分析したり、業界勢力図を作成したりと、統合後の「あるべきビジョン」を実現していくための戦略立案や、その目標に則った合併・買収後の統合作業/PMI(Post Merger Integration)を担います。
M&Aは買収・合併の契約を結ぶことが目的ではなく、クライアント企業の事業を軌道に乗せ、成長させることが本当の意味での成功です。そのためには必要不可欠な役割です。
④ファイナンシャル・アドバイザー(Financial Adviser)
上記の①~③の業務が期限内に終わるようスケジューリングをしたり、クライアントの希望条件をヒアリングした上でM&A対象企業の選定(ソーシング)を行ったりと、M&A全体をコーディネートする指揮官の役割を持っています。
M&A業務における花形業務とも言われており、とても人気の高いポジションです。
中途採用におけるBIG4 FASの選考フロー
書類選考
応募書類は履歴書・職務経歴書の2種を作成いたします。英語面接が発生することもあまりないため、ご用意いただくのは和文のみで構いません。
またFASのポジションの中には「第二新卒」枠で採用を行っているケースもございます。
社会人経験の浅い方は、職務経歴書として「これまでのご経験/ハードスキル」を深く記載するのは難しい方もいるでしょう。
その場合は「志望理由書」を作成いただくことをお勧めしています!
志望理由書の内容につきましては、志望理由・自己PR・スキル/資格・(大学/大学院等で親和性の高い領域を専攻・研究されていた方は)研究内容を書いていただくと良いでしょう。
適性テスト
適性テストについては、実施しないことの方が多いでしょう。ただし一部のポジション・一部の法人で適性テストを行うケースがございます。
これまで我々がご支援した方のケースでは、③コーポレートストラテジーというM&A戦略を担当する部門で適性テストを課されたことがありました。
稀に直接的に活かせる実務経験をお持ちでない第二新卒の方など、地頭を見るべくイレギュラーで適性テストを課されることもあるため、「限りなく実施するケースは少ないが、一部のポジションと実務経験の深浅によって適性テストは課される」という認識をしていただくと良いかと思います。
面接
前回ご紹介したBIG4税理士法人の移転価格部門(USCPA転職活動③)と似ているところもあり、BIG4 FAS部門につきましては通常2~3回の個人面接を予定しております。
1次面接では現場により近いシニアスタッフ~マネージャー、2次面接ではマネージャー~シニアマネージャー、最終面接ではディレクター~パートナーの方が面接官を務めることが多いでしょう。
面接回数につきましては個人に因るところが多く、標準的には2~3回ですが、なかには1回の選考で内定を取得された強者もいらっしゃいます!
また面接につきましては複数回に分けて平日夜に面接を行う通常選考の他にも、採用温度感の高いポジションでは「1日選考会」「休日選考会」といったように、選考回数が通常よりも少なくなるイベントや、現職が忙しくてなかなか平日に面接が組めない方向けに土日・祝日を用いて面接を行うイベントがある場合もございます。
特にこういったイベントでは前半部分で法人・部署の説明を受け、後半で面接行うという二部構成のケースが多いです。拘束時間も長くなり、情報も盛りだくさんのボリュームある1日とはなりますが、通常選考よりも採用温度感が高く、選考が進みやすいケースもあるため、もしエージェントより選考イベントの提案を受けた場合は、前向きにご検討いただくこともお勧めいたします。
(ただし内定までスピーディに出てしまうため、他法人と併願をご検討されている場合はエージェントに相談しながらスケジュールを決めましょう。)
内定
BIG4監査法人、BIG4税理士法人同様に内定が出た場合、通常1週間程度は検討期間があります。
なお、口頭のみで内定が伝えられることはなく、内定通知書(オファーレター)がメール添付で渡されます。
前述の選考イベントのケースを除くと、通常書類応募~内定までにかかる期間は短い方で1カ月半、長い方で2カ月程度を要することがございます。
USCPAの応募書類作成ポイント
BIG4 FASを応募する際に、まず書類作成の段階から意識いただくことがあります。書類作成における重要なポイントは2点、「志望理由」「ご経歴のフィット感」です。
こちらをしっかりと意識いただけるだけで、書類の完成度がグッと上がります。
志望理由は「M&A業務に対する誠実性」が決め手
「将来はM&Aに携わりたいと思います」そう面談の場でお話いただく方も多いですが、まずこの言葉に対して我々が感じるのは「どこまでM&Aのことを理解されていて、その上でどういったM&A業務をやりたいと考えていらっしゃるのか」ということです。
そしておそらく、この視点はFASの選考において切っても切れない関係を持ちます。
この表現を使うのは悩ましいところではありますが、M&A業務において詳細理解に至らないまま「何となく格好いい」「大きな仕事をしている気がする」という漠然とした憧れから志望される方もいらっしゃいます。
正しい業務理解がないまま応募してしまうと「ミーハー」と捉えられかねません。
前回ご紹介させていただいたBIG4税理士法人の移転価格部門のように「興味のある分野であれば、しっかりと調べていますね?」という姿勢を先方は持っています。
下記のようなポイントは志望理由を考える上で、まずは前提条件として押さえておきましょう。
- M&Aにおける一連の業務の流れ
- M&Aにおける各ポジションの業務理解
- セルサイド(売り手)・バイサイド(買い手)のそれぞれの関わり方の違い
- コンサルティング会社側と事業会社側でM&A業務に携わることの違い 等
2つの「何故」に答える志望理由を作成しよう。
志望理由を作成する上では、事前の情報収集が大切だということは前述の通りです。そこまで準備ができれば、次に必要なのはタイトルにもありますように2つの「何故」に答えることです。
- 何故、M&A業務に携わりたいのか?
- 何故、そのポジションを希望するのか?
こちらについてはご自身の経験と紐づけることができると一番書きやすいかもしれません。
「現職(コンサルティング会社)でM&Aに伴う統合作業に携わっており、より専門的に取り組みたいと思った」「所属している企業がM&Aを繰り返す中で効果的に収益とノウハウを向上させており、企業にもたらす大きな影響力に感銘を受けた」「経理部で財務デューデリジェンスに携わっており、その専門性をブラッシュアップしたい」等、M&A業務に関心をお持ちになったきっかけと共に記載いただくと良いでしょう。
また具体的なポジション選択の際には、現職でのご経験を活かしやすいフィールドを選んでいただいた方が良いでしょう。
例えば銀行等で融資業務を担当されていた方の中には、有形資産・無形資産の価値、企業の財務諸表分析を経て融資額を決定されたご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この経験はバリュエ―ション業務における素地として活かすこともできるため、より経験の深さを訴求するために融資業務を行ってきた企業数(場数と経験値)、規模感(扱う数字の大きさ)等も具体的にアピールいただけると良いかと思います。
なお、どういった業務経験がフィットするのかは、以前にご紹介させていただいたFASの業務内容(USCPAの転職先③)を合わせてご覧ください。
面接では志望理由とキャリアビジョンを明確に示す
面接の回数、面接官の職位等は既に記載の通りですが、「BIG4 FAS」だからといって、そこまで構える必要はございません。
我々がこれまで見聞きした中でも、「圧迫に近い面接だった…」というケースはございませんでした。
比較的、淡白であっさりとした印象を受けられる方が多い傾向にあります。言い換えるのであれば、面接官の反応が見えにくく、本人側は手応えを感じにくい面接となる場合がございます。かといって、そういった場の雰囲気に怯んだり物怖じしたりしてはいけません!
しっかりと伝えることを伝えなければ、内定取得には至らないからです。そのためにも、ここでは代表的な質問を取り上げたいと思います。
将来的にはどうなっていないたいか?(3年後、5年後)
FASの面接において、将来のキャリアビジョンは当然のことながら聞かれます。法人にもよりますが、3年後・5年後といった中長期的な観点でそれぞれのキャリアビジョンを質問されることもあるでしょう。
一般的に3年という期間で考えるのであれば、応募ポジションの業務において一通りの内容を理解し、自走しながらパフォーマンスを発揮できるようになっている頃かと思います。
そして5年後という目線で見れば、3年間で習得した業務知識・経験を「さらに尖らせるのか」「出来る領域を広げるのか」「プレーヤーからマネジメントする立場を意識するのか」等、個々人の目標によって思い描く像が異なるはずです。
M&Aにおける花形業務であるFAについては、その選考水準も高いため「まずは他ポジションで経験を積み、将来的に異動して挑戦したい」という方もいらっしゃるでしょう。
例えば「あくまでもFAが本命で、バリュエーションでの経験はそのための繋ぎ」という姿勢は、戦力として活躍してほしいバリュエーション部門にとって、長く積極的に活躍してもらえる人材とは映りづらいかもしれません。
あくまでもスタンスの問題ですが、「バリュエーションで企業価値評価に関する理解と経験をしっかり深め、その上でそういった知見も活かしつつFAとしてよりクライアントに高い水準のサービスを提供していける人材となりたい」という、まずは「応募したポジション」でどういった人材となり得たいのか、というところまでしっかりと意識をお持ちいただけると良いでしょう。
- 何故M&A業務を希望するのか?
- 何故そのポジションを希望するのか?
- 何故そのファーム(法人)を希望するのか?
この3つの質問は面接の流れの中で、セットで質問されることが多いかもしれません。ご経験の親和性というハードスキル以外の要素、M&Aに対する熱意をここでは審査されています。「M&A業務の一連の流れ」「各ポジションへの理解」「BIG4 FASの各ファームの特色・強み」等はしっかりと把握しておくことが必要でしょう。
さて今回はBIG4 FASに焦点をあててお話をしてきましたが、イメージは掴んでいただけたでしょうか。
どの業界、職種を応募する際もその志望理由や動機は重要視される傾向にありますが、これまでとりあげてきた監査法人、税理士法人、FASではより顕著かもしれません。
専門性が高いポジションだからこその覚悟や強い気持ちを審査されますし、一方で人気があり候補者の集客に困らない職種だからこそ、より親和性が高く、志の高い優秀な人間を好んで採用する傾向にあるのです。
「USCPA全科目合格したから、転職活動をしよう!」というタイミングで活動することももちろん良いのですが、学習中や科目合格の段階から転職活動の下準備はできます。
各業界の業務理解を深めるために、関連する時事ニュースにアンテナをはったり、導入的な書籍を読むのも良いでしょう。来るべき転職活動に備えて「USCPA取得後のキャリア」に対する投資の時間を、少しずつ取り入れてみるのも良いですね。