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「なんとなく」の転職活動から抜け出す。自己分析で叶える、後悔のないキャリア選択

「本当にやりたいことが分からない」「今の経験が転職市場でどう評価されるのか自信がない」——キャリアの岐路に立つとき、多くの方がこうした迷いを抱えます。

その迷いを解消し、納得のいくキャリア選択につなげる鍵となるのが「自己分析」です。今回は、ABキャリアでキャリアアドバイザーを務める鈴木織奈氏より、自己分析の重要性と実践ステップについて伺った「自己分析セミナー」の内容をお届けします。


なぜ自己分析が必要なのか

自己分析_Will×Can

自己分析は転職活動に限った話ではありません。現職での異動希望など、自らのキャリアを主体的に考えるすべての場面で役立つプロセスです。

転職活動においては、「何をやりたいか(Will)」と「何ができるか(Can)」の両方を整理し、深掘りすることが求められます。そして、このWillとCanのどちらが重視されるかは、年代によって変化します。

  • 20代・スタッフクラス:実務経験がまだ短いからこそ、転職理由や将来のキャリアビジョンといった「Will」が重視される
  • 30代・中核メンバー:実務スキルと長期的なキャリアビジョン、つまり「Will」と「Can」がバランスよく見られる
  • 40代以上・役職者クラス:チームを牽引できる即戦力としての実務スキル、すなわち「Can」が強く求められる

    年齢が上がるほど「何ができるか」という即戦力性が重視される傾向にあるのです。
     

「言語化できているつもり」が招くミスマッチ

自分では十分に言語化できていると思っていても、実は解像度が低いケースは少なくありません。

例えば「将来は監査法人で働きたい」という希望を持つ方がいたとします。この一言だけでは、会計監査をやりたいのか、コンサルティングに近いアドバイザリー業務をやりたいのか、業務を通じてどんなスキルを得たいのかまでは分かりません。

もし「社会貢献をしたい」「他者から直接感謝されたい」という動機があるなら、この2つの仕事は相性が大きく異なります。

  • 会計監査:クライアントの決算書が正しいかをチェックする立場で、投資家や株主のために行う仕事。経理担当者から直接お礼を言われる機会は少なく、緊張感のある関係になりがち
  • アドバイザリー業務:クライアントの課題解決に寄り添うコンサルティング。プロジェクト完了時に直接感謝される関係性を築きやすい

USCPA(米国公認会計士)などの資格取得者が「資格を活かしたい」と考える場合も同様です。「学んだ内容を実務に活かしたい」のか「資格を肩書きとして評価されたい」のかによって、選ぶべき選択肢は変わります。US GAAPやIFRSといった会計基準の知識をアウトプットに直結させたいのであれば、監査法人での会計監査・会計アドバイザリーや企業の経理といった仕事がフィットするでしょう。

このように、志向性を細部まで言語化することこそが、自分に合った仕事を選ぶための鍵になります。

自己分析、3つの実践ステップ

では、具体的にどう進めればよいのでしょうか。3つのステップをご紹介します。

事故分析3ステップ

ステップ1:キャリア振り返り年表をつくる

これまでのキャリアを時系列で振り返り、仕事の満足度を折れ線グラフで表しながら、その時々の業務内容や満足度の理由を書き出していきます。

登壇者の鈴木氏自身の例を見てみましょう。

自己分析_グラフ


24歳のとき、予備校勤務で現場を離れ、イベント企画などの生徒募集の管理側に回った時期に満足度が著しく低下しました。生徒と直接接する機会がなく、現場感を掴めないことが原因でした。一方でこの経験は、交渉力や折衝力、ストレス耐性を養う機会にもなりました。その後26歳でクラス担任として現場に復帰し、生徒の合格を間近でサポートできるようになると、満足度はV字回復したといいます。

このステップで大切なのは、成功や失敗を並べるだけでなく、なぜ満足度が上下したのかを言語化することです。それによって、自分が仕事において何を大切にしているのかが浮かび上がってきます。

ステップ2:動機付け要因と衛生要因を整理する

自己分析_要因整理

心理学者ハーズバーグの二要因理論を使い、「動機付け要因(満足度ややりがいにつながるポジティブな要因)」と「衛生要因(不足すると不満足につながる要因。給与、残業時間、人間関係など)」を、「仕事軸」「条件軸」「環境軸」に分けて整理します。

転職理由を語る際、動機付け要因を軸にすると「何がしたいか」という前向きな印象を面接官に与えられます。反対に、衛生要因ばかりを前面に出すと、ネガティブな印象を持たれやすくなるため注意が必要です。

例として、仕事軸における「人と接すること」が動機付け要因、前職での「営業数値と生徒に寄り添う姿勢のバランスが崩れるような強制力」が衛生要因(ネガティブな要因)でした。こうして可視化することで、転職において譲れない条件が明確になります。

ステップ3:自分の武器を棚卸しする

最後に、自身の強みを次の3つに分けて整理します。

  • ハードスキル:実務経験や専門知識
  • ソフトスキル:仕事への姿勢やマインド
  • 保有資格:知識やスキルの証明

自己分析の結果を、求人選びにどう活かすか

自己分析で見えてきた自身の武器や志向性は、実際の求人に当てはめてこそ意味を持ちます。その前提として欠かせないのが、企業の採用要件を正しく理解することです。

求人票には、応募の前提となる「必須業務経験」と、他者との差別化に有効な「歓迎要件」が記載されています。自身の武器がこれらに対して不足していればスペック不足、逆に大きく上回っていればオーバースペックと判断されてしまいます。自身の武器と企業の採用要件が近いほど、フィット感は高まります。

例えば、プライム上場企業の海外子会社向け経理チームの求人であれば、必須要件として「会計実務経験」、歓迎要件として「高いExcelスキル」が挙げられることがあります。加えて、変化が多くスピード感のある業界であれば、業務区分が頻繁に変わる環境を楽しめるかという「志向性のフィット」も重視されます。

自己分析で整理したハードスキル(会計実務経験やExcelスキルなど)が必須・歓迎要件に合致しているか、そしてソフトスキルや志向性が企業のカルチャーに合致しているか——この2つを照らし合わせることで、入社後の活躍イメージを具体的に描くことができるのです。

おわりに

「やりたいこと」をただ並べるだけでは、納得のいくキャリア選択にはたどり着けません。年代ごとに市場価値がどう見られるかを理解し、自分の満足度の源泉やスキルを構造化して言語化すること。それこそが、能動的なキャリア開発の第一歩です。

キャリアの節目に立つ今だからこそ、自身の「Will」と「Can」を客観的に見つめ直してみてはいかがでしょうか。

鈴木織奈(すずき おりな)
鈴木織奈(すずき おりな)
株式会社アビタス |ABキャリア キャリアアドバイザー 教育業界でのカウンセリングや指導経験を経て、ABキャリアへ参画。これまでに11年間にわたり、数多くの会計プロフェッショナルやUSCPA合格者たちのキャリアに向き合ってきた。単なる求人紹介にとどまらず、一人ひとりの可能性を引き出すカウンセリングを大切にしながら、現在も多くの求職者の能動的なキャリア開発をサポートしている。