
FAS業界徹底解説:なぜ今こんなに人気?市場データで見る業界の勢いとキャリアパス
「コンサルティング業界を目指したいが、実際のところ今の市場環境はどうなのか」——就職・転職活動でFAS(財務アドバイザリーサービス)やコンサルティング業界を検討する際、まず押さえておきたいのが業界全体の市場動向です。
近年、M&Aや企業変革の現場で急速に存在感を増しているFASは、優秀な人材が集まるコンサルティング業界の中でも、専門性の高さと将来のキャリアの広がりから大きな注目を集めています。
今回は、Big4コンサルティング会社や大手税理士法人、中小コンサルティングファームの採用支援を幅広く手掛けるABキャリアのリクルーティングアドバイザーが解説した「FAS業界セミナー」の内容をお届けします。FASの概要や主な業務領域、業界構造、そして未経験から挑戦するためのポイントを分かりやすく解説します。
そもそもFASとは?市場データから紐解く人気の理由
FASとは「Financial Advisory Service(財務アドバイザリーサービス)」の略称で、主に「財務やお金」に関わる領域でクライアントの企業価値向上や課題解決を支援するコンサルティング分野です。
FASの提供サービスは、大きく2つに分けられます。

- M&A・事業承継:企業価値を高める(プラスにする)ための支援
- 事業再生:業績不振に陥った企業の経営を立て直し、マイナスをゼロに戻すための支援
企業が大きく変革する「最も重要なタイミング」に立ち会い、経営課題を直接解決に導くため、非常に社会貢献度とやりがいが大きい仕事です。
市場データで見る「なぜ今こんなに人気・勢いがあるのか?」

FASがこれほど注目されている背景には、コンサルティング市場全体の拡大と、日本およびグローバルでの強固な需要(市場データ)が存在します。
① コンサル業界自体の高成長
コンサルティング業界は飛躍的な成長を続けており、国内市場規模は2021年の5,724億円から、2026年には8,732億円に達すると見込まれています。その中でも特に成長率が高く、人気を集めているのがFAS領域です。
② M&A件数が約15倍に急増(1985年からの推移)
日本のM&A件数は、1985年の年間約260件から、2019年には4,000件を超える水準へと約15倍に拡大しました。 この急増を後押ししているのが以下の要素です。
- 中小企業の後継者不足問題の解決:少子高齢化に伴う後継者不在や業績不振の解決策としてのM&A・事業承継ニーズ。
- 事業拡大・企業価値向上:先進国・日本問わず、資本主義社会で勝ち残るための事業再編や海外展開(IN-OUT/OUT-IN)などの成長戦略としてのM&A。
労働人口減少への対応や企業の成長維持に向け、M&Aや事業再生をプロとして主導するFASの存在は、今後も必要不可欠となっています。
FASの主要業務領域(事業再生・M&A)

① 事業再生コンサルティング
業績不振や資金繰りに悩む企業に対し、財務状況の調査(実態把握)から事業再生計画の策定、金融機関との返済交渉、企業内部の立て直しまでをトータルでサポートします。クライアントの雇用や取引先を守る社会的貢献度が高く、非常にやりがいのある分野です。
② M&Aコンサルティング
M&A(合併・買収)の一連のプロセスを支援します。案件(ディール)のフェーズに合わせて主に4つの専門ポジションが存在します。
- トランザクション(財務DD):対象企業の過去の決算書等を調査し、隠れたリスクや財務上の問題を分析・精査する。
- バリュエーション・モデリング:対象企業の企業価値評価(いくらで買う/売るべきか)を算出し、将来の業績シミュレーションモデルを作成する。
- コーポレートストラテジー(Pre/Post):・Pre(ビジネスDD):M&Aの戦略立案や対象企業の将来的な市場成長性を分析する。・Post(PMI):買収完了後、異なる組織・制度・文化を持つ会社同士を統合し、シナジー効果を創出する(約100日計画の実行など)。
- フィナンシャルアドバイザー(FA):買収側または売却側の立ち位置に立ち、戦略立案から条件交渉、各専門チームの統括までM&A全体を指揮・プロデュースする。
FASの業界構造と特徴

FASを展開するファームは、主に以下の3つのグループに分類されます。
金融系FAS(投資銀行)
特徴:案件規模が数100億〜数千億円規模の超大手上場企業中心。FA業務が軸となり、自グループの金融機能を活かした資金調達(ファイナンス)支援が可能。
会計系FAS(Big4など)
特徴:Deloitte、KPMG、EY、PwCなどのグローバル会計ネットワークを背景に持ち、財務DDからバリュエーション、PMIまで総合的なアドバイザリーをワンストップで提供。
独立系FAS
特徴:金融系や会計系に属さない独自のファーム。中堅・中小企業やスタートアップ、PEファンド向けのスモール〜ミドル案件に特化し、小回りを利かせた柔軟な対応や事業再生・ハンズオン支援に強みを持っています。
Q&A:未経験からのキャリアに関するよくある質問
Q:未経験からFAS業界に挑戦することは可能ですか?
可能です。ポジションによって求められる経験やバックグラウンドは異なります。
- 財務DD・バリュエーション:公認会計士やUSCPA(米国公認会計士)保有者、監査法人出身者、銀行の融資・審査経験者が親和性が高いです。
- PMI・ビジネスDD:IT/人事に強みを持つコンサルタント出身者や、事業会社での企画・マーケティング・プロジェクトマネジメント経験者が重宝されます。
Q:M&A仲介会社とFASのM&Aコンサルは何が違うのですか?
ポジションとスタンスが異なります。
- M&A仲介:売り手と買い手の「中間」に立ち、両者のマッチングや条件交渉を中立的に進めます(結婚相談所のようなイメージ)。
- FAS(M&Aアドバイザリー):「売り手側」または「買い手側」のどちらか一方の陣営にのみ付き、依頼主の利益を最大化するためのアドバイスや交渉を行います。
Q:未経験者が選考でアピール・準備すべきことはありますか?
必須資格がなくても挑戦できるポジションは多く、実務での共通スキルや自発的な学習姿勢が大きく評価されます。
- 選考でアピールできる経験・スキル事業会社出身者:決算早期化や会計システムの導入・変更といった「プロジェクト型の経理・財務経験」、またはマーケティング・事業企画でのデータ分析経験が強みになります。金融機関・他領域コンサル出身者:融資・審査業務での財務分析力や、IT・人事コンサル等で培った課題解決力・PMO経験(PMI領域で重宝されます)が評価されます。
- おすすめの事前準備財務諸表を読み解く会計知識やエクセルによるデータ分析スキルの習得はもちろん、USCPA(米国公認会計士)などの資格取得に向けて勉強を進めておくのがおすすめです。未経験からのポテンシャル採用において、実務への意欲と学習意欲を示す強力なアピール材料となります。
おわりに
日本の労働人口減少や後継者不足、グローバル競争の激化に伴い、企業の存続と成長をかけたM&Aや事業再生のニーズは年々高まっています。
FASは高度な専門性が求められるハードな環境ですが、企業の歴史的な転換点に立ち立ち、自らの手で変化を起こす手応えを得られる魅力的なキャリアです。財務・会計の専門知識やプロジェクト推進力を磨き、市場価値の高い人材を目指す方は、ぜひFAS業界への挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。



